そして、今度こそテレビへの広告出稿が減るかもしれないと民放局の営業部員は不安を漏らす。
「これまで、インターネット広告が増えてもテレビ向けの広告費は新聞や雑誌ほど影響を受けませんでした。とはいえ、世の中の景気に左右されるので厳しい状況にありますが、それでも、お金を集める方法は大きく変わりませんでした。でも、これからはわかりません。いまだにCDショップがなくならないように、日本はアメリカに比べてオールドメディアが残りやすい環境にあるから怖がらなくていいと言う先輩もいますが、スマホでばかり番組を観る自分の子供のことを思うと、広告ビジネスが根本から変わる時代が来るのかなという思いもあります」
2016年の広告費総額は6兆2880億円、そのうちテレビは1兆9657億円で前年比101.8%増。インターネット広告は1兆3100億円で始めて1兆円を超えた(電通『2016年 日本の広告費』調べ)。テレビ広告費は新聞や雑誌などの活字メディアと比べると、前年比増を記録し持ちこたえている。一方、インターネット広告は、広告の世界で巨人として君臨していたテレビ広告に迫る規模になりつつある。
現在、広告で圧倒的な力を持っているはずのTVも、その座は安泰ではない厳しい現実を、有料動画配信サービスにまつわる冒頭の調査が突きつけた。うすうす気づいていた日本の業界関係者も、気づかぬふりは続けられないと思い直し始めている。
1954年に日本でテレビ放送が始まり、初めてのテレビCMも同じ年に始まった。約半世紀にわたるテレビCMの歴史を彩る印象的なCMによって流行語が生まれ、影響を受けた子供たちが真似をした。ところが、最近では純粋にCMを発信源とした流行は少ない。半世紀が過ぎて、そのあり方が大きく変わる時を迎えているようだ。