だけど私もまんざらのばかじゃなかったんだよね。当時の女子はみんなスケバンファッションよ。上着の丈はギリギリまで短く、スカートはどこまでも長~いセーラー服に、ペチャンコの学生鞄。
でも私は、買ったまんまの普通のセーラー服に普通のかばんを持っていたの。いくらおばか学校の制服を着ていても、その方が賢くて清純そうに見えるから。思った通りよ。毎日のように他校の男子からラブレターをもらったり、家までつけられたこともあったっけ。
その中で、私が初めてつきあったのは、地元ではいちばんの進学校に通う、いっこ上の先輩。顔がちょっと野口五郎に似ていたの。学校帰りに彼の家に寄るのが日課でね。彼の両親は共働きだから、夜まで家には誰もいない。そりゃあ、なるようになるって。キスをして彼に胸を触られて、気がついたら終わっていた。本当に彼が好きだったんだよね。
1回したら、あとはもう、会えばするって感じ。3か月もたたないうちに生理が止まっちゃった。ふたりで「どうする、どうする」って。それでも男はやりたいんだよね。
で、時間ばかり過ぎていって、妊娠5か月に入ったところで母親が私の膨らみかけたお腹に気づいて、それからよ。
父親は腕組みして、母親が一方的にわめき散らして。そしたら、向こうの父親、地方銀行に勤めているからスーツ着ているんだけど、「将来、必ず結婚させるから、今回だけは中絶してくれ」と畳に額をこすりつけたわけよ。
私も高1で子供を産む覚悟なんかないから、中絶するしかない。彼は、何度も「ごめん」と謝ってくれたけど、彼が大学進学で東京に行ったら、自然消滅しちゃった。
◆夜の山の中で木に縛って竹刀で殴る男
それから何人かの男と遊んだりして、高3のときにはいっぱしの悪よ。妊娠のこともあったから、顔を合わせれば母親は怒鳴り、父親は殴る、ってそんな感じ。
「てめえなんか出ていけ!」って父親が言う頃には、こっちにも男がいてね。高卒で地元の工場のラインで働き出してすぐ、知り合ったばかりの男のアパートにころがりこんだわけ。
この男が嫉妬深くて、私が残業で帰りが遅くなると、「男と会っていたんだろう」と怒り出すの。私もばかだから、「私のすべてをわかって」なんて、初体験とか妊娠中絶の話をみんなしちゃったんで。
そのうち、働いていた自動車の修理工場を休んでまで職場に迎えに来るようになり、私がいやな顔をすると暴力。初めのうちはアパートで、素手で殴られていたけど、そのうちエスカレートして、車で山に連れて行かれ、木に縛られて竹刀で殴り出したの。しかも跡が残る顔じゃなくて、体ばっかり。