暗闇で黙って殴り続ける男の怖さといったら…とてもじゃないけど別れたいなんて言えるもんじゃないよ。

◆暴力男から逃げる手助けをした上司と…

 そんな私の様子を見て、声をかけてくれたのが、経理課の上司だったの。25才年上の上司は、「黙って家を出た方がいい。しばらくはここに身を隠せ」と、県外の繁華街にある、寮つきのグランドキャバレーを紹介してくれたのよ。

 そこを見に行った帰りに、上司は当たり前のようにモーテルにハンドルを切って、ま、不倫だよね。上司は心配して毎日のように様子を見に来てくれるわけ。そして店が終わると、ふかふかのじゅうたんの高級な店に連れて行ってくれる。ヘネシーやレミーマルタンというお酒を初めて知ったわよ。

 そうそう。結局、寮には入らず、上司が用意してくれたコーポで半同棲よ。冷蔵庫、洗濯機、ベッドも全部買ってくれたんだ。

 中年男といえば、農業で朝から泥だらけになって働いている父親と、似たり寄ったりの親戚しか見たことがなかったからね。スーツを着て働いている大人の男はお金持ち、だと思ったのかな。

「お前とどうしても一緒になりたいから、東京に行こう」と東京行きを迫られたら否も応もないよね。冬の寒い日に、ボストンバッグ1つ抱えて彼とたどり着いたのは、東京の小岩。

「離婚するまではここでがまんしようね」と、4畳半の台所と6畳の和室のアパートを見せられたときは、あんまりボロで笑っちゃった。

 上司は何かに怯おびえているようで、道を歩けば何度も後ろを振り返るし、住民票を移動しないから、電話も引けない。健康保険証がないから仕事も日雇いしかない。家でゴロゴロする日が増えてきてね。私は生活のためにキャバレー勤め。

 そんなある朝、数人の警察官がアパートの階段を駆け上がってきたの。「逃げろっ」と言ったときの上司の般若のような顔は、今でも目に焼き付いているわね。

〈次回につづく〉

※女性セブン2017年3月30日・4月6日号

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン