障害者の就労支援ときくと、賃金が低いので仕事というより訓練だというイメージが強い。ところが、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が訪ねた北海道十勝平野の真ん中にある芽室町(めむろちょう)では、経済的自立につながる就労支援がされている。ゲートボール発祥の地でもある芽室町のユニークな取り組みと、その意義について鎌田医師が解説する。
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世界の最も裕福な8人の資産は、世界の下位半分の36億人の資産とほぼ同じ。そんな驚きの報告を、あるNGOが発表した。
資本主義が暴走し、拡大する富の格差はもはや常軌を逸している。分厚い中流層は崩壊し、貧困層へと転落しかねない不安のなかで、民意も大きく右に振れたり、左に振れたりしている。
いったい、お金とは何なのか。働くことはどういうことなのか。格差、過労死、ブラック企業……という、今のいびつな資本主義経済に疑問を投げたくなる。
そんな折、北海道十勝地区にある芽室町を訪ねる機会を得た。人口2万人に満たない小さな町だが、ユニークな取り組みをしている。「だれもが当たり前に働いて生きていける町」を目指し、障害者の就労支援に力を入れているのだ。
障害者の就労支援というと、簡単な仕事をし、工賃をもらう作業所を想像する人が多いだろう。作業所での仕事は生活能力や社会性を高めるための「訓練」であり、経済的自立はあまり考えられていない。平成25年の平均工賃月額は約1万4500円というが、作業所によっては数千円程度という話もよく聞く。法的には、就労継続支援B型という。