ライフ

下駄箱の上にまで本が並ぶ辞書編纂者が好んだ小説家の名は

日本語を正しく使う(写真:アフロ)

 ツイッターで気をつけたい日本語の使い方や漢字クイズで人気のある毎日新聞・校閲グループから興味深い本が出た。フリーライターの神田憲行氏が紹介する。

 * * *
 本は毎日新聞社用語委員会用語幹事の岩佐義樹氏による「毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術」(ポプラ社)である。いわゆる「文章読本」は過去に谷崎潤一郎、三島由紀夫のような名文家たちがいくつも書いてきたが、この本のポイントは「文章が上手くなる」ことではないことだ。書名の通り、文法や言葉の使い方で「ミス」を無くすことに主眼が置かれている。といってもミスのない文章は読みやすく、読みやすい文章は上手い文章と言える。美文を求めるのではなく実践的な指南書なのである。

 私も読み始めてすぐ、「あ、この本は大切にしないと」と思った。というのは30年近い私のライター生活で、いつも迷う言葉遣いの正解がほぼ網羅されてるからである。間違いやすいポイントは、他人が書いた文章を毎日、山のように読んできたであろう筆者の頭の中のデータベースが活かされていると思う。

 文法からの考察や固有名詞のチェックの仕方などを紹介し出すと切りが無いので、私が苦笑させられて勉強になったものをひとつ。「味あわせる」という言葉である。

《「味あわせる」はニュース系のウェブサイトを含め多く見られます。何の疑問も持っていない人が少なくないのでしょう。しかし活用させてみると、すぐおかしいことに気づくはずです》

 ニュース系のウェブサイトは校閲者を置く余裕がないところが多い。筆者のチクリとした皮肉を感じて笑った。

《「味あわせる」の基本形は「味わう」。「味あう」ではありません(中略)だから「味わわせる」が正しく、「味あわせる」とはなりません》

 本書の俎上に載せられる文章はニュースだけでなく、安倍首相のスピーチなども再三取り上げられている。「能うる限り」という言葉の間違いをブログで指摘したところ、「能う限り」と正しく首相が言うようになったという。筆者はブログの影響があったのか不明としているが、おそらく影響しているだろう。これもジャーナリズムの仕事である。

トピックス

AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト