昭和の時代、仕事服であるスーツに身を包み、モーレツに働いていたサラリーマンたち。納品や締め切りといったスケジュールに日々追われるなか、彼らが愛用していたのが、腕時計用の極小カレンダーである。
1月分のカレンダーが薄いアルミに印刷され、両側を折り曲げて腕時計のベルト部分に装着するこのアイテム。使った経験があるという方も多いだろう。
過去の遺物かと思いきや、どっこい生き残っていた。しかも発売即完売の超人気商品だというから驚きだ。
現在もウォッチバンドカレンダーを製造販売する株式会社大成の社長・根本孝宏氏の話。
「かつては銀行や保険会社の販売促進グッズとして使われていました。ところが、デジタル時計の普及やスマホの登場などで、だんだん世間から姿を消していった。今では多分うちしか作っていないでしょうね(苦笑)」
トロフィーや記念メダル、社章などの製造販売を手がける同社は、1970年代から腕時計用カレンダーを取り扱っていた。
「かつては何十軒もの会社に卸していたんですが、その数もだんだん減って2012年にはついになくなってしまった。でもこの文化をなくしてしまうのは忍びなくて、その年に個人用としてネット販売を始めたんです」
すると、意外や意外、売れ行きは好調。翌2013年にはテレビにも取り上げられ、2017年度版は発売と同時に売り切れたという。
「購入されるのは、面白がって買ってくれる人と“昔から使っているから”という人と半々です。うちは家族でやってる小さな会社ですから、受注から発送まで僕ひとりでやっています。正直たいした儲けにはなりませんが、弊社の販促だと思っています(笑い)」
※週刊ポスト2017年4月14日号