そもそも、戦時における民間人の虐殺・強姦と、民間の施設だった慰安所の問題は本質的に異なる。日本は韓国の“肉を切らせて骨を断つ”術中に嵌らないよう警戒すべきだ。

 ちなみに、ベトナム戦争では、ベトナム女性を中心とした東南アジアの女性たちが、韓国兵に性的サービスを提供する“慰安所”があったと、私はベトナム戦争に参加したことのある軍人出身から直接聞いたことがある。また、朝鮮戦争では米軍相手の韓国人慰安婦が多数存在した。「善なる被害者」であることに酔いしれる大多数の韓国人はベトナムでの蛮行をタブー視する。自分たちの汚点を棚に上げ、「悪いのは日本人だけ」という単純なストーリーに固執するのだ。

 そうした物語の定着を避けるためにも、日本はベトナム戦争における真実を徹底して学術調査し、その結果を英訳して諸外国に提供する努力が求められる。

 同時にベトナムで何があったかを知らない韓国人の啓蒙も必要だ。しかし前述の通り、日本人が直接的に指摘すれば、彼らは感情的に猛反発するだけだろう。

 だから、この問題の当事者であるベトナム人が動くほうが望ましい。彼らがベトナム戦争における「民間人虐殺の慰霊碑」や「ライダイハン像」などをハノイにある韓国大使館前に建設したら、さすがの韓国人も無視できないはずだ。韓国人は日本以外の外国の目をとても気にするからだ。

 そうした状況を促すため、場合によっては日本側がベトナム人に慰霊碑の設置を働きかけてもいいだろう。

 英語での発信を中心として、今後の日本には粘り強く情報戦を戦い抜く外交が求められる。親北政権で反日を強める韓国の情緒に対抗するには、事実を積み上げた論理で世界を味方につけるしかない。

●呉善花(オ・ソンファ)/1956年韓国済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。『「反日韓国」の苦悩』(PHP研究所刊)、『朴槿恵の真実』、『侮日論』(いずれも文春新書)など著書多数。

※SAPIO2017年5月号

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン