◆マイナンバーの確認で「業務量は3倍に増加」
そんな職員たちの大きな負担になっているのが、2015年4月に始まったワンストップ特例制度と、2016年4月からのマイナンバー制度だという。通常のふるさと納税は納税者が自ら申告するが、ワンストップ特例制度では寄付を受けた自治体が、申し込み者の住む自治体に通知しなければならない。その際のマイナンバーの確認作業が大変なのだ。
「マイナンバーが始まってから業務量が3倍程度に増えました。申請書に書いてある住所、氏名、性別、生年月日とマイナンバーの通知カードのコピーの記載を照らし合わせて、間違っている場合は電話かメールで連絡。確認がとれたらマイナンバーを手入力してシステムに取り込み、間違いがないかチェックする。
同じかたが年度中に何回も申し込まれている場合は、合算してそのかたが住む自治体に送らなければならないので、名寄せ作業をしてから通知書を印刷し、相手の自治体に郵送します」(沼澤さん)
2016年度に天童市が申し込みを受けたワンストップ特例制度の数は約4万3000件。そのうち約1万件が12月後半から翌年1月半ばに集中した。
「その時期はうちの部署の隣の広報係、企画・まちづくり係、秘書係などほかの部署の人にも手伝ってもらって総出で作業しました」(沼澤さん)
こうした職員たちの苦労に支えられている天童市のふるさと納税は、地元の産業振興にも大きな効果をもたらしている。
「将棋駒の産業規模は2倍以上になり、商工会議所が行っている育成講座も受講生が倍近くになるなど、伝統工芸の継承にもつながっている。お米の『つや姫』などは、ふるさと納税で食べたのをきっかけに、直接、業者から買う人も増えています。“おいしくて、他のお米に戻れなくなった”という声も聞きますね」(沼澤さん)
将棋駒ストラップをもらったのがきっかけで、実際に駒屋さんで将棋セットを買った人もいるという。
「返礼品が届くと、丁寧なお礼の連絡をくださるかたもいます。アンケートに書かれている励ましの声や、生産者のかたの喜びの声がやりがいにつながっています。だからきつくても続けられるんです」
と沼澤さん。彼ら7人のサムライの地元愛と情熱が、天童市のふるさと納税を支えている。
撮影/下重修
※女性セブン2017年4月20日号