【2】抗菌薬入りの点眼薬は不必要。有害なケースも
結膜炎で処方される点眼薬も場合によっては無駄である。総合診療医の岸田直樹氏が指摘する。
「結膜炎の原因の多くはアレルギー性やウイルス性であり、菌を殺す抗菌薬入りの点眼薬では、そのどちらにも効果がありません。ごく稀に淋菌性結膜炎という細菌感染が原因の場合もありますが、これはわずか数%に過ぎない」
抗菌薬入りの点眼薬は、かゆみや痛み、腫れや充血を起こす原因にもなるとされる。
【3】不眠症の治療薬として「抗精神病薬」はあまり効果がない。重い副作用のリスクもある
抗精神病薬には入眠や睡眠の持続を補佐するという、確かなエビデンスは存在しない。そればかりか、高コレステロール血症、血栓症、体重増加、めまい、糖代謝異常などの重い副作用リスクが隠れている。
「不眠症の原因が精神的な不安から来るものだと決めつけ、安易に抗精神病薬を処方される場合があります。高齢者の不眠は布団に入るのが早すぎたり、頻尿などが原因ということが多く、抗精神病薬に頼る必要があるケースのほうが稀。抗不安作用のあるベンゾジアゼピンなどは、服用するとフラフラになり、転倒して骨折される方もいます」(前出・北氏)
【4】「前立腺がん」は進行が遅いため、焦って手術や放射線治療を受けてはいけない
日本人男性の前立腺がんの罹患率は、60歳を境に急増するが、重篤化する可能性は低いとされている。
「前立腺がんの腫瘍は非常にゆっくりと進行するため、命に関わるケースが少ない。にもかかわらず早期に手術や放射線治療を行なうことで、勃起不全、尿失禁などの副作用が多数報告されており、生活の質(QOL)を著しく損ねる方もいます。治療を焦らずに定期的な経過観察のみで対応できる場合も多いのです」(同前)