一方、金正恩も米国は攻撃してこないだろうという目算があったと見られる。4月13日、金正恩は平壌市内の高層マンション群「黎明(リョミョン)通り」の竣工式に現れた。こうした場に、金正恩が現れるのは極めて異例だ。海外メディアを気にしたのか、それとも自分に対する攻撃に不安があったのか、落ち着きがなかったものの、4月15日には軍事パレードのひな壇にも立っている。
今後も、今回と同様に一時的に緊張が高まることがあるだろうが、しばらくたつと何事もなかったかのように過ぎる可能性が高い。
となると、金正恩は遅かれ早かれ、核実験、そして長距離弾道ミサイルの発射実験を強行しながら、核武装国家に向けて着々と進んでいくだろう。米国に着弾可能な核ミサイルが完成すれば、もはや米国でさえ手出しできず、日本に対して脅威を与えつづける国家となりうる可能性が高い。
核ミサイルの悪夢は、いつまで続くのだろうか。
●こ・よんひ/関西大学経済学部卒業。1998年から1999年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。
※SAPIO2017年6月号