「自暴自棄でしたし、もう何もかもどうでも良かったからAV出演を快諾しました。これ以上落ちることもないと思ったし…」
某AV女優事務所に所属した途端、社長やA子からの脅迫や連絡は一切なくなった。新事務所は二人からの脅迫をはねつけ、マイコを守ったのだという。
「AVの現場は面白く、スタッフさんもみんな優しい。お給料だってしっかり契約通りに支払われる。AVの世界は恐ろしかったけど、社長に脅されていた時のことを思えば天国ですね」
とはいえ、あまりに不幸な状況にいたマイコは、ただそこから逃げ出したい一心で、次なる闇に足を踏み入れただけかもしれない。比較して天国に見えているだけなのかもしれない。しかし、マイコがAV女優へと転身することでパワハラやセクハラ、ひどい金銭的搾取から脱出できたのは事実だ。一方で、AV女優となったことで芸能事務所に所属していた頃のマイコのような被害に遭う人もいる。共通しているのは、所属する女性を金儲けして搾取する道具としか考えていない悪人たちの存在だ。彼らの手段がAVであれ芸能であれ、同様に許せるものではない。
マイコを最悪の状況へ陥れた件の社長とA子は、また新たに”芸能関係”の仕事をスタートさせ、クラウドソージングサイトなどでコンサル業務などの仕事を募っているというが、安定しているとは言い難い状況なのだという。マイコは警鐘を鳴らす。
「あの二人は、自分たちの為なら人の事など死んでもいいと思っている。私もしゃぶり尽くされましたが、またきっと新たな被害者が出ます。その時、今度は私があらゆる手を使って、あの二人を潰してやろうと思っているんです」
去った世界のことなど、他人のことなど放っておけばよいと思うかもしれない。しかし、そうやって多くの人が長い間、放置し続けた結果、悪徳な芸能事務所やAV関係者が大手を振って活動し続け、どちらの業界にも被害者を生み出し続ける悪人が去らない。普通に暮らせる世界を保つには、悪人が居られなくなるための努力が必要だ。勇気をもって被害を告白してくれるマイコのような女性達の声に、これからも耳を傾けてゆこうと思う。