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【書評】なぎら健壱が綴る、消えゆく町への愛惜の念

【書評】『町の残像』/なぎら健壱・著/日本カメラ社/本体2000円+税

【著者プロフィール】なぎら健壱(なぎら・けんいち):1952年東京銀座(旧・木挽町)生まれ。フォークシンガー、エッセイスト、タレント、俳優などで活躍。下町、酒場、フォークについての著作が多い。『町の忘れもの』(ちくま新書)、『酒場のたわごと』(実業之日本社)など著書多数。

【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)

 フォークシンガーでタレントである著者が、カメラ片手に東京の下町などをあてもなく歩き回り、古い時代の名残を感じさせる光景を写真に撮り、それについてのエッセーを綴った本。

 廃屋となって久しそうな、墨田区東向島に残る赤線時代の建物、いかがわしさと猥雑さが残っていた時代を偲ばせる浅草の片隅、華やかさとは無縁の、路地裏の雰囲気を湛えた銀座の三原橋地下街、昔ながらの個人商店や昼から飲める飲み屋などが軒を連ねる葛飾区立石の商店街、墨田区京島に数多く点在する昭和の棟割り長屋……。

 著者は、「昭和ブーム」が起こる遙か前……もう30年も前から下町についての本を書く、その世界の第一人者である。銀座の旧木挽町に生まれ、葛飾区金町で育った著者が、そうした光景にこだわりを持ち続けるのはなぜか? バブル以降の東京は町が変化するスピードが速く、昨日まであった建物がいつの間にかなくなり、〈一夜にして、忽然と消えてしまったような錯覚〉に陥ることが多い。

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