「麻酔をかけて行う施術である以上、リスクがゼロというわけにはいきません。非常に稀ですが、麻酔が血液内に入って局所麻酔中毒になり、呼吸停止や心停止が生じることがあります。また、麻酔注射の際に血管が破れて血種ができて神経を圧迫したり、末梢神経に障害が生じる可能性もあります」
2014年8月にイギリスで無痛分娩を選択して女児を出産した30代の女性は、産後に麻酔の副作用で足に力が入らなくなり、下半身まひと診断された。現在は毎日5時間のリハビリを行いながら車いすで生活しているという。
他にも血圧低下や発熱、頭痛や吐き気、排尿障害などの合併症も報告されている。無痛分娩には麻酔以外のリスクも生じる。鉗子や吸引器具を使う器械分娩の割合が、自然分娩に比べて増える傾向にあるのだ。
自然分娩に比べて経済的な負担が増すことも知っておきたい。
「麻酔などの管理費用がかかり、一般的な出産費用より10万~20万円ほど高くなります。無痛分娩は保険適用外なので自費です。自然分娩に比べてマンパワーが必要な面は否めません。“お産難民”と一時期いわれたように、医師が少なくなり、産婦人科自体が減っています。その現状にあって、全国的な普及や保険適用を求めるとなると、まだしばらく時間がかかるでしょう」(林先生)
どんな出産方法を選ぼうとも、利点とリスクが併存していることを忘れてはいけない。
※女性セブン2017年6月8日号