「治療の手法やガイドラインが長年変わっていないカテーテルは、ベテラン医師が得意とする分野です。
しかし、脳血管にカテーテルを通し動脈瘤にプラチナ製のコイルをあてがって破裂を防ぐ『コイリング』という最新の治療法は、アメリカなどで技術を学んだ40~50代の医師にしかできないことが多い。経験がモノをいうため、若すぎるドクターでも不安です」(開業医の北野國空氏))
心筋梗塞や狭心症の手術においても、カテーテルを使う場合はベテラン医師でも得意な人が多い。
だが、心臓の手術でも「冠動脈バイパス手術」(CABG)なら若手医師のほうが優れているという。CABGは最も多く行なわれる心臓外科手術で、カテーテルでの対応が難しいケースに行なわれることが多い。身体の健康な血管の一部を採取して心臓の冠動脈に血液が流れるバイパスをつくるが、胸を切り開くためカテーテルと比べて患者への負担が大きい。2012年2月に天皇が狭心症治療のため受けた手術として知られる。米国の医療事情に詳しい医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。
「2006年に米ミシガン大学のウォルジー医師が発表した研究では、60歳以上の医師がCABGを行なうと、60歳未満の医師と比べて患者の死亡率が高くなると報告されています。その論文では原因は明らかにされていませんが、加齢とともに視力が落ち、手先の器用さも失って、瞬時の判断能力が衰えるからだと推測されています」