経営コンサルタントは基本的に企業と“運命共同体”であり、その企業のために10年でも20年でも働くが、投資銀行や投資ファンドはM&A自体が目的だから、後のことには関心がないのだ。
たとえば今回の東芝の場合、もし私が相談を受けていたら、上場にこだわらずLBO(※)を仕掛けるだろう。東芝の半導体事業は2兆円の価値があるとも言われているが、今なら東芝全体を5000億円足らずで買えるからだ。LBOをやって非上場にした上で、じっくり時間をかけて各部門を再建し、業績が回復したら一つずつ再上場する。そうすれば借金は一気に返済できるだろうし、何一つ事業を売却する必要もない。
【※LBO/Leveraged Buyoutの略。買収先企業の資産または将来のキャッシュフローを担保に金融機関などから資金を調達して行なう企業買収】
ところが、今は投資銀行や投資ファンドが群がり、東芝を解体して儲けようとしている。もし私が頼まれたら、無償でも協力して瞬時にLBOを実行するのだが、傍観しているしかないのは残念至極である。
※週刊ポスト2017年6月16日号