だがどんなに隠しても、長男の奇行はいつしか近隣に漏れ伝わり、心ない言葉をかけられたこともあったという。
「息子さん、頭おかしくなったんやろ、とかね。毎日が絶望です。“この子を殺して死のう”と、心中を考えたこともあります」(大畠さん)
一家が地域から孤立するのは時間の問題だった。転機は発病から3年後。長男の主治医からもたらされた。同じ悩みを抱える家族の集う会合の存在を教えられ、参加してみたのだ。バラック建ての小屋に当事者家族が4~5人。最初に表情が和らいだのは妻だった。
「みんな同じ苦しみを抱えているんです。それをすべて打ち明けて、分かち合って。最初の集いの帰り道、妻が久々に明るい表情になりました。家族会は、“泣き合い会”なんです。慰め合い、傷をなめ合う。それがどれだけ助けになることか。家庭内で抱えてはダメなんだと痛感した出来事でした」(大畠さん)
この経験をきっかけに、大畠さんは、「和歌山県精神障害者家族会」を設立。仕事の傍ら、同会の活動に邁進することになった。
※女性セブン2017年6月22日号