国内

円周率4万桁暗唱する84才男性の「3秒イメージ」記憶術

円周率4万桁暗唱に成功した元ギネス記録保持者の友寄英哲さん(84才)

 友寄英哲さん(84才)は円周率4万桁暗唱に成功した元ギネス記録保持者で、ルービックキューブを目隠しで揃える競技の世界最高齢記録を持つ男性である。そんな友寄さんの記憶力の源泉を探ってみた。

 友寄さんは1932年に東京・文京区で生まれた。教師の父、専業主婦の母と2人の妹という5人家族だった。幼い頃から本が好きで『トム・ソーヤの冒険』『ジャンバルジャン』などの児童文学を読みあさった。

 小学5年生の時に戦争が始まり、千葉、岩手など全国各地に疎開。最終的に落ち着いた茨城での生活が、今に続く記憶力の素地を作った。

「一家は貧しく、山の麓の作業小屋のような住居に住んでいました。電気もなく夜は真っ暗。とても勉強なんてできません。中学時代は学校までの往復12kmを歩きながら勉強していました。“ながら”の習慣はその頃に身についたんです」(友寄さん)

 そして、“ながら”は友寄流記憶術のカギとなる方法の1つ。料理をしながらルービックキューブの解法を覚える、テレビを見ながら数独を解く…といった具合に、2つ以上の行為を同時にこなすことを友寄さんは大切にしている。彼の場合、幼少期の体験からそれが自然と体に染みついていたのだという。

 夜空の星の燦めきに魅せられ、天文学を勉強しようと東大を受験するも失敗。2浪の末、電気通信大学に入学した。運命の出会いは学生時代に訪れた。ある時、街中で20桁の数字を暗記する芸で観衆をわかせる大道芸人がいた。彼が売っていたのが、僅か10ページほどの小冊子だった。

「50円くらいだったかな。なんとなく買ってみたら、そこに書いてあったのが語呂合わせ式の記憶術だったんです。『4618』なら『シロイハ』と覚える。今でこそ数字の語呂合わせは有名ですが、当時はまだ珍しくてね。そのやり方が楽しくて、友人の電話番号や銀行口座、会員番号などを片っ端から覚えていきました」(友寄さん)

 暗記の魅力に取りつかれていった友寄さんは、大学卒業後、ソニーの前身、東京通信工業株式会社に入社。海外営業部門に配属され、世界各国を回った。27才の時、出張先で偶然、1000桁の円周率表を手に入れたことが、以降の人生を変えるきっかけとなった。

「半分趣味で覚え始めたら、30才で1000桁の暗唱に成功したんです。当時は通勤途中の往復3時間で少しずつ覚えていきました。駅まで歩きながら10桁覚え、電車の中で次の10桁を覚え…。“ながら勉強”の典型ですね。学生時代からずっとこの調子なので、何かをしながら暗記することが苦にならないんです。当時、ギネス記録が8000桁前後と知り、“これならできるかも”と新記録への挑戦を始めました」(友寄さん)

 コツコツと努力を重ね、46才で1万5000桁、翌年に2万桁の暗唱に成功した。記録が伸びたきっかけは「3秒イメージ」の発見だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン