「いちばん最初にご利用いただいたのは、大きな会社の役員だったかたの貸し切りでの散骨でした。船内を花いっぱいにデコレーションして、イタリアンのシェフに厨房に入ってもらって会食。遺族のかたが、フルートで『千の風になって』を演奏されました」

 と、ここまで聞いてから、今さらだが、散骨って合法なんだろうか。

「墓地、埋葬等に関する法律」には、そもそも散骨という葬送方法は想定外。刑法の「遺骨遺棄罪」に抵触するのではという議論があったが、1991年に法務省が「葬送のための祭祀の一つとして節度をもって行われる限り、(散骨は)遺骨遺棄罪には当たらない」と見解を示した。

「歴史が浅いので、行う側にその方法を委ねられているというのが現状です。旅客を乗せて運航する営業許可を得ていない船を使うとか、遺骨をぞんざいに扱うとか、心ない業者がいないといえないのが残念です」

 これまで取材したお寺や霊園で、「散骨すると、手を合わせる場所がなくなる」と聞かされたが、ブルーオーシャンセレモニーが羽田沖を散骨スポットにするのは、「羽田空港から手を合わせられるため」。さらに、散骨後に、散骨場所を訪ねる「メモリアルクルーズ」を年間14回も実施。「ほぼ毎月乗船する遺族もいる」そうで、その心配は軽減されているようだ。

 施行の件数は、初年の2007年に6件。昨年は250件となり、今年は300件を超えそうという。

 私が乗船した「合同乗車散骨プラン」は2人で12万円(追加1人につき1万5000円)。クルーザーを借り切る「チャーター散骨プラン」が25万円(定員24人。料金追加で、船内での会食や生花祭壇の設置も可)、遺族が乗船しない「代行委託散骨プラン」が1柱につき5万円。一般的な永代供養墓よりも安い。どんなケースが多いのだろうか。

「100人いれば、100通りの事情があると思います。私の母の時のように、海を好きな故人が希望し、家族も納得してというケースが多いですが、ここ2、3年で目立つのが、海外に暮らしている遺族と、改葬をするかたからの申し込みですね。

 海外在住のかたは、急いで帰国し、限りある日程の中でお葬式と散骨をされる。お墓に納骨してもお参りに来られないけど、海なら海外にもつながっているから、どこにいても拝めると考えられるようです。改葬のかたは、新しいお墓に入れられる遺骨の数をオーバーした場合に遠い先祖の遺骨何人分かを散骨されます」

 村田さんは、そう答えてから少し間をおき、こうも言った。

「すごくこだわりを持って散骨を選ぶ人と、海を遺骨の捨て場と考える人と、二極化してきていますね」

※女性セブン2017年7月13日号

関連キーワード

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン