ライフ

作家・百田尚樹氏「戦後の日本人は軍人への敬意を失くした」

作家・百田尚樹氏が日本人の戦争観に疑問を呈す

 戦後70年を過ぎ、戦争の記憶はますます遠ざかる。『永遠の0』で知られる作家・百田尚樹氏は、元日本軍エースパイロットたちの証言を集めた戦記ノンフィクション『撃墜王は生きている!』(井上和彦著、小学館文庫)の解説で、日本人の戦争観に疑問を呈している。

 * * *
 著者の井上氏も書かれていますが、戦後の日本人は軍人に対するリスペクトというものを失くしてしまいました。

 軍人というだけで、まるで犯罪者のように見る「進歩的文化人」や「左翼ジャーナリスト」が戦後のマスメディアを支配していたからです。今も、野党の国会議員の中には、自衛隊員を「人殺し」とか「暴力装置」と表現する人がいます。こんな国は他にありません。

 他国においては、市民はおしなべて軍人に対する敬意を持っています。それは当然のことです。もし戦争となれば、彼らが命を懸けて自分たちを守ってくれるのですから。

 たしかに「戦争」はよくない。それは当たり前のことです。しかし戦争を憎むことと、軍人を憎むことは全然違います。軍人の究極の目的は国を守ること、そして国民の命を守ることです。

 この本には五人の元帝国陸海軍の戦闘機搭乗員の話が語られています。そのほとんどが本土防空戦の話です。第一章に登場する元陸軍の板垣政雄軍曹の言葉がいきなり私たちの胸を打ちます。彼はむざむざと東京空襲を許してしまった後に、こう言います。

「そりゃもう、ただ東京都民に申し訳がなくてね」

 板垣氏は「空の要塞」と言われたB29に、戦闘機「飛燕」で二度も体当たりを敢行して、これを撃墜した搭乗員です。これはまさしく「対空特攻」です。幸いにして板垣氏は二度ともパラシュート脱出に成功しましたが、これは体当たりの衝撃で操縦席から投げ出された結果です。おそらく体当たりした時は死ぬ覚悟であったに違いありません。爆撃機B29による本土空襲から市民の命を守りたい、その一心からの行動です。

関連キーワード

関連記事

トピックス

解散を発表したTOKIO(HPより)
《TOKIO解散には迷いなし?》松岡昌宏、「男気会見」で隠せなかった本音 唯一違った“足の動き”を見せた質問とは?
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
ディップがプロバスケットボールチーム・さいたまブロンコスのオーナーに就任
気鋭の企業がプロスポーツ「下部」リーグに続々参入のワケ ディップがB3さいたまブロンコスの新オーナーなった理由を冨田英揮社長は「このチームを育てていきたい」と語る
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《渡部建の多目的トイレ不倫から5年》佐々木希が乗り越えた“サレ妻と不倫夫の夫婦ゲンカ”、第2子出産を迎えた「妻としての覚悟」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン
都内の日本料理店から出てきた2人
《交際6年で初2ショット》サッカー日本代表・南野拓実、柳ゆり菜と“もはや夫婦”なカップルコーデ「結婚ブーム」で機運高まる
NEWSポストセブン