今は認知症に関する情報が豊富にあり、よく勉強して病気を理解することができるが、一方では情報過多により“認知症とは、こういうもの”と、決めつけてしまい、かえって気持ちが通じなくなったり、偏見が生まれたりすることもある。「それが残念」と、今井さん。
「その点、情報に毒されていない子供たちは、認知症の高齢者と難なく接しますね。私の患者さんで、風呂に入らない男性がいました。入浴拒否は認知症の特長的な行動の1つでもありますが、介護をする家族は、衛生面からなんとか入浴させようとし、強く拒まれて辟易します。
そんなとき、中学1年生の孫が困り果てた親を見て、祖父を銭湯に誘います。昔、祖父と銭湯に行って楽しかったことを思い出したのです。すると男性はすんなりと銭湯に出かけ、孫の背中を洗ってやり、ごきげんで帰ってきました。かつて“痴呆”と呼ばれた認知症は、昔からある病気。昔は、人の人生のごく普通の過程ととらえられ、少々おかしな言動も受け入れられていた。子供たちの感性は、今も昔も変わらないのですね」
※女性セブン2017年7月27日号