国内

幼い子供に学ぶ認知症患者との付き合い方

知症治療の第一人者、和光病院院長の今井幸充さん

 異常行動、情緒不安定、意思疎通ができないなど不安の多い認知症。しかし、介護する側の態度や気持ち次第で、本人の苦しみが和らぎ、介護も楽になるという。認知症治療の第一人者、和光病院院長の今井幸充さんに聞いた。

 親が認知症になり、最初に悩むのは接し方だ。多くの場合、記憶や見当識(日にちや時間、季節などの感覚)の障害があるため、会話がうまくかみ合わなかったり、徘徊や暴言・暴力など、今までにはなかった言動が表れて、まるで別人格になってしまったように思える。

「それは、病気によって変化したことばかりに目がいってしまうから。認知症になったからといって、その人の内面的な本質は変わりません。認知症は、何らかの原因で脳細胞が死滅したり、働きが悪くなったりすることで、脳が司る身体活動や精神活動がうまくいかなくなっている状態です。認知症でいちばん多いアルツハイマー型は、記憶を司る海馬と呼ばれる部位から支障が出るのが特徴で、つい直前の記憶がなくなります。

 想像してみてください。会話していて、今話していたことがわからなくなる。ふと、なぜ自分がここにいるかが理解できなくなる。大変な不安と恐怖でしょう。この不安と恐怖がさまざまな異常行動につながるのです。また、同じく脳機能の低下で、表現力が乏しくなる、考えが短絡的になる、感情の抑制が効きにくくなります」(今井さん、以下「」内同)

 そして、家族の接し方についてはこう語る。

「初期の認知症に多い『もの盗られ妄想』などはその典型。自分が財布をしまい込んだ場所がわからなくなり、その原因が自分の認知症であると考える前に、いちばん身近な家族が盗ったと短絡的に考え、すぐに疑いの言葉を浴びせてしまう。

 異常行動だけを見れば、変わってしまったように見えるかもしれません。また認知症以前を知る家族だからこそ、その変化が悲しいのもよくわかります。でも病気で機能が低下しているのだと思ってみてください。それが理解され、“大丈夫、わかってるよ”と目の前の家族が示せば、どれだけ不安、恐怖、緊張が和らぐことか。そして気持ちが通じ合い、よくよく親を見れば、必ずその人らしい姿が見出せるはずです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン
今年の”渋ハロ”はどうなるか──
《禁止だよ!迷惑ハロウィーン》有名ラッパー登場、過激コスプレ…昨年は渋谷で「乱痴気トラブル」も “渋ハロ”で起きていた「規制」と「ゆるみ」
NEWSポストセブン
アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで5歳の少女が意識不明の状態で発見された(被害者の母親のFacebook /オハイオ州の街並みはサンプルです)
【全米が震撼】「髪の毛を抜かれ、口や陰部に棒を突っ込まれた」5歳の少女の母親が訴えた9歳と10歳の加害者による残虐な犯行、少年司法に対しオンライン署名が広がる
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《新恋人発覚の安達祐実》沈黙の元夫・井戸田潤、現妻と「19歳娘」で3ショット…卒業式にも参加する“これからの家族の距離感”
NEWSポストセブン
キム・カーダシアン(45)(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストの元妻の下着ブランド》直毛、縮れ毛など12種類…“ヘア付きTバックショーツ”を発売し即完売 日本円にして6300円
NEWSポストセブン
レフェリー時代の笹崎さん(共同通信社)
《人喰いグマの襲撃》犠牲となった元プロレスレフェリーの無念 襲ったクマの胃袋には「植物性のものはひとつもなく、人間を食べていたことが確認された」  
女性セブン
大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(秋田県上小阿仁村の住居で発見されたクマのおぞましい足跡「全自動さじなげ委員会」提供/PIXTA)
「飼い犬もズタズタに」「車に爪あとがベタベタと…」空腹グマがまたも殺人、遺体から浮かび上がった“激しい殺意”と数日前の“事故の前兆”《岩手県・クマ被害》
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン