大手繊維メーカーのユニチカ(大阪府大阪市)は、汗を素早く吸収するとともに、ウエア内の不快なムレ感も解消させる放湿性を併せ持つ新素材のインナーやシャツを披露。
「消防やレスキューなど高温の過酷な現場でも着用されています」(ユニチカトレーディング営業担当者)
ハードメッシュ生地のベストのポケットに、高性能保冷剤を直接挿入して着る『ホレイベスト(税込7500円程度~)』をネット販売しているのは、山梨に会社があるA-MEC。
「食品用の保冷剤は冷たすぎて、すぐ溶けてしまいますが、当社開発の保冷剤は人体に最適な温度を長時間持続させることができます」(担当者)
ちなみに同ベストは犬用などペット向けも販売されている。
『空調風神服(1万円台後半~)』というユニークなネーミングのウエアを販売しているのはサンエス(広島県福山市)。その名の通り、綿やポリエステルでできた長袖ジャンパーの背中下部に小型ファンが取り付けられ、常に衣服内に風を送り込むことができる。
同社の担当者によれば、ファンの動力源にはリチウムイオンバッテリーが搭載され、最強の風量にしても8時間は回り続けることができる。また、上方気流を発生させる「ななめファン」を独自開発し、より効果的に衣類に空気を巡らせることができるという。
購入者の多くは建設業ほか現場仕事の多い労働者だというが、「最近は釣りやキャンプといったアウトドア、ガーデニングなど外で趣味を楽しむ方々からの問い合わせも増えています」(担当者)。
そして、究極の冷却ウエアといえるのが、東京都中央区に本拠を置く老舗繊維メーカー、帝国繊維(東京都中央区)がつくった『冷却下着ベスト型』だ。
ベストの内部に張り巡らせたチューブに、氷で冷却された水を循環させる仕組み。これにより、暑熱環境化での体温上昇を抑制し、未着用時に比べ6~7℃も服内温度が違うという。まさに水風呂に浸かっているような状態である。
もともとJAXA(宇宙研究開発機構)が過酷な宇宙空間で体を迅速に冷却するために開発した特殊なベストで、同商品もJAXAとのコラボで生まれた。タンク型、リュック型のポンプユニットを付属する本格的な装置のため、価格も7万2000円~9万8000円と高額。やはり炎天下での作業が欠かせない人のニーズが圧倒的に多いというが、中にはこんな購入者もいる。
「炎天下の墓地で法要を行うお坊さんや、手術中にオペ室の温度をむやみに下げられない医師などが購入していった事例があります」(帝国繊維の営業担当者)
さらに、冷却ベストの用途は広がりをみせ、レーシングパーツの開発・販売を行うエイチ・ピー・アイ(東京都江戸川区)では、モータースポーツ等でのレース競技やサーキット走行などに活用している。
高温多湿の猛暑が年を追うごとにひどくなる日本列島の夏。突然の熱中症で取り返しのつかない事態になる前に、これら高性能化した“ひんやりグッズ”を上手に活用するのも手だ。