ここまで個別の疾病とその治療薬についてデータを紐解いてきたが、年齢を重ねれば罹患する病気が複数になることもある。特に、新たな疾患にかかった場合は注意が必要だ。
「例えば、降圧剤を服用している高血圧の患者が腎臓病を患うと、降圧剤が腎臓の血流を悪くして腎臓病を悪化させます。このような“負の連鎖”を生み出さないためにも、持病が増えたら自分の医療状態を正確に医師に伝えることが必要です」(石原医師)
日本の医療界にはこうした“負の連鎖”が生まれやすい土壌があると長尾クリニックの長尾和宏医師が指摘する。
「製薬会社は薬価の高い新薬を使ってもらうために大病院の医師にプロモーションをかける。また、医師は薬をやめて患者の容態が悪化することを懸念する。臓器別で縦割りの学会は製薬会社の意向を忖度したガイドラインを作り、杓子定規にそれに沿った投与を推奨している側面もある。
適切な投薬を行なおうとしても、患者が『整形外科』『循環器科』といった複数の診療科をまたがって受診している場合には、それぞれの医師が薬をバラバラに処方してしまうため、“負の連鎖”が生まれてしまう。
“患者ファースト”とはほど遠い治療を避けるためには、患者側も“薬頼み”にならないよう、生活習慣を見直すなどの意識変革が必要です」(長尾医師)
日本は薬の「安全神話」が根強い。だが安全を盲信することが最も危険なのだ。
※週刊ポスト2017年8月4日号