ライフ

【著者に訊け】杉江松恋さん・PTA会長として3年間の奮闘

『ある日うっかりPTA』を上梓した杉江松恋さん

【著者に訊け】杉江松恋さん/『ある日うっかりPTA』/KADOKAWA/1404円

【本の内容】
 それは2008年2月15日にかかってきた1本の電話から始まった。〈「もしもし、杉江さんですか。(中略)推薦委員会の嶋本と申します。実は──」〉。PTA会長を引き受けるか、引き受けないか。そして引き受けて以降、次々と持ち上がる難題や内部のいさかいに右往左往しながらも、一つ一つ解決していく様子は爽快感がある。「中に出てくることは全て事実。かなり赤裸々に書いています。だから、地元の書店で本が売れてるのがわかると、中に出てくる人たちにバレるんじゃないかってヒヤヒヤする(苦笑)」(杉江さん)。

 * * *
 PTAの活動経験がないのにうっかり引き受けた会長職。驚きの連続だった3年間の奮闘を、ライターで書評家の杉江さんが、トラブルも隠さず、ありのままを振り返った。

「初めてやるのに会長、っていう人は結構いるみたいです。役員経験者は大変だと知ってるから、知ってる人ほど会長をやりたがらない。新しい人から、ぼくみたいなおっちょこちょいを探してくることになるんですよ」

 PTAの経験こそなかったものの、学童保育の保護者会や、読み聞かせのボランティアに参加していたので、「適性あり」と目をつけられていたのだろう。当時の杉江さんは金髪・ヒゲ・サングラス姿で、別の意味でも目立っていたはずだ。

「妻にも、『結婚したとき、あなたがPTA会長をやる人だなんて思わなかった』って言われるんです。髪だけは黒く染めてほしいと前任者に頼まれ、短く切りましたけど、別に金髪だっていいじゃん、と今でも思っています」

「PTAの常識」として列挙される事柄が面白い。任意であること、教師も入っていることなど知られていないことも。先入観のない杉江さんは、変だな、と思うことは変えていった。

「『なるべく手を抜こうね』というのが、当時の校長とぼくとの間でできた合意で(笑い)。役員の人たちとも、減らせる仕事は減らしましょう、と言ってました」

 好奇心から引き受けた会長職。本を読むと、どことなく楽し気でもある。

「サークル活動っぽくしたくて。楽しい仕事ではないけど楽しい一面もどこかにはあるはず。でないと『やらされてる感』でいっぱいになっちゃいますから」

 仕事柄、杉江さんは自分で時間を調整できたが、勤めている人は半休を取らなければならない。働く女性も増えて、PTAはたいへん、という印象は強い。

「ぼくのやってたころが端境期で、今はもう少し忌避感が強いかな。情報が何もないのに引き受けなきゃならない、というのがいちばん大変なので、『自由参加でいい』とか、いろいろなことが共有されるようになるといいです」

(取材・文/佐久間文子)

※女性セブン2017年8月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン