「近いうちにアクションを起こす」と亀井静香氏
西郷がいなければ、日本は欧米諸国に無批判に従う追従国家になっていた。歴史を作るのはまさに人であり、私の理解では、西郷は日本人の典型である。ところが御一新に貢献した西郷は、西南の役で明治政府に逆らったとして靖國神社に祀られていない。西郷だけでなく、江藤新平や白虎隊、新選組なども「賊軍」として祀られていない。
しかし「賊軍」と言えども、国を想い、民を想い、天皇陛下を想って戦った誇り高き人たちであり、勝者・敗者の区別なく認められるべきである。こうした諸霊が靖國神社に祀られていないのは至極残念であり、今からでも過去の内戦でお亡くなりになったすべての御霊を合祀すべきだ。
日本人の心情では、“死んだら皆平等”は当たり前の話となる。明治維新の理念である「一君万民」「万民平等」に照らし合わせても、国のために戦った人間を差別すべきでない。
だが残念ながら、現在の靖國神社は「長州神社」になっている。大鳥居をくぐった先に建っている長州藩の大村益次郎像が、新政府に反抗した幕臣軍・彰義隊が立てこもった上野の山を睨みつけていることが、その象徴だ。しかし長州は蛤御門の変で京都御所に発砲した“朝敵”であり、その意味では彼らも賊軍ではないか。
官軍、賊軍のわだかまりは今も続く。長州は戊辰戦争の際、会津の犠牲者の死体を片づけさせないで野晒しにするなど、道義的に見てひどいことをした。今も会津では「長州憎し」の風潮が残り、私の会社にいる会津出身の役員も、飲食店の女将が山口出身とわかったらその店に一切行かなくなったほどだ。もしも賊軍が合祀されれば、国内に今なお残る軋轢を解消するきっかけとなるかもしれない。
【PROFILE】1936年、広島県生まれ。東京大学経済学部卒業。1962年警察庁入庁、1977年退官。1979年、衆院初当選、運輸大臣、建設大臣を歴任。2005年国民新党を結党。2009年、国務大臣金融・郵政改革担当に就任。現在無所属。近著に『「YES」と言わせる日本』(石原慎太郎氏との共著/小学館)、『亀井静香天下御免!』(岸川真著/河出書房新社)など多数。
取材■池田道大
※SAPIO2017年9月号