SUBARU自慢の走りをさらに追求したスポーツセダン「WRX」
SUBARUは昨年秋、「インプレッサ」というコンパクトモデルを発売した。先行研究から数えると8年以上をかけて作ったという全面新設計のボディ、サスペンションの仕上がりは素晴らしいもので、世界のどこに出しても胸を張れるくらいのものだったが、それが出たことによってレヴォーグが性能、快適性の両面で少なからず見劣りするようになっていた。
もちろん今回のレヴォーグの改良はフルモデルチェンジのように全部を刷新したというわけではないため、インプレッサと同じように軽く、走行抵抗の少ない走り味になったわけではない。が、走りに関する重要な部分にしっかり手を入れることで、その差はかなり詰まったという感があった。
続いてスポーツセダンのWRX。こちらもシャシー(クルマの走りを支えるサスペンションや駆動装置)に大幅な改良を加えてきた。
その改良の細かい説明は省くが、最も性能の高い「STI」というグレードの新旧モデルを乗り比べてみると、新型は旧型に比べて車重がひとまわり軽くなったのではないかと思うような敏捷性を発揮した。旧型も2014年に登場した当初、走りについては高い評価を受けてきたのだが、それをはるかに上回るフィールであった。
最も大きな違いが出るのはきついカーブでの回り込みで、コーナー出口に向かってアクセルを踏めるポイントが旧型よりひと息もふた息も早いのが印象的だった。
自動車メーカーはすべてのクルマを一気に刷新することはできない。フルモデルチェンジで良いクルマが出来ても、そのことで他のモデルが魅力を失うことがあっては、ブランド力を確立するのは難しい。レヴォーグやWRXについて、そうなることがないような手の入れ方をしてきたあたり、SUBARUは少量生産メーカーとして価値を持続的に上げていくツボをつかみつつあるように感じられた。
さて、少量生産主義に徹すると宣言したもうひとつのメーカー、マツダもまた、クルマの価値を上げるのに懸命である。マツダがこのところ取り組みを強化しているのは、安全性の強化だ。
安全性といえば、衝突回避システムなどの先進安全装備や各種警報、衝突安全ボディといった技術的なものが思い浮かぶが、マツダが取り組んでいるのはそれだけではない。商品本部の猿渡健一郎副本部長が語る。
「安全は安心に、安心はドライビングプレジャーに直結する。この3つは分けて考えるべきではない。運転の楽しさを阻害する安全上のリスクや不安要素は何かということをしっかり考えて、安全性というものをデザインしていきたい」
そのマツダの安全システムのなかで筆者が注目しているのは、ヘッドランプだ。マツダはハイビーム/ロービームの自動切換えだけでなく、ハイビーム時に先行車や対向車を避けて照射する機能を持つアクティブハイビームを2014年、ミドルクラスセダンの「アテンザ」に搭載した。
アクティブハイビーム自体はすでに普及が始まっているものだが、それを搭載しているクルマのほとんどは高級車。コストが高いからだ。が、マツダはそれを高価なモデルだけでなく、サブコンパクトカーのデミオまで採用車種を拡大した。
さらに今年6月にマイナーチェンジされた「CX-3」は、古典的なハロゲンヘッドランプの最安グレード以外、すべてのグレードについて、アクティブハイビーム機能つきのLEDヘッドランプを標準装備にした。
前出の猿渡氏は、高価なアクティブハイビームを標準装備化した理由について、
「これがあるのとないのとでは夜間走行時のモノの見え方がまるで違う。対向車が連続しているようなときも標識や道路案内の看板はくっきり見えるし、障害物の発見も早い。安心はドライビングプレジャーを支える最も重要な要素であるという観点からは、ついていて当たり前にしたい。今はまだ高価だが、他メーカーさんが標準化に追従してくれれば量産が進み、そのうち必ず安くなる」
と述べた。筆者は2月にアクティブハイビームが装着されたデミオで東京~鹿児島間を3400kmほどツーリングしてみたが、その効能は猿渡氏の主張そのもので、一度それを装備したクルマに乗ると、普通のヘッドランプには戻れないというくらいに夜間走行時の安心感は抜群であった。