ビジネス

年金支給先延ばし 働いた場合手取りは2.6万円低い試算

年金支給年齢の75歳への引き上げが検討されている

 年金支給を75歳に引き上げる検討が始まっている。元々「定年後は年金をもらい、贅沢はせずとも時に預貯金を取り崩して旅行をするなど人間らしい生活をしたい」などといったビジョンを持っていた人も方針転換を強いられる。定年後も74歳までは働く必要が出てくることだろう。高齢者が従来もらえていた年金額と同じ月額22万円を稼ぐことができても、給料明細を見てショックを受けることになる。社会保険労務士・蒲島竜也氏の指摘だ。

「収入の額面は同額でも年金と給料では手取りが大きく違うからです」

 夫婦ともに65歳以上で合わせて月額22万円の年金を受給する標準モデル世帯の場合、所得税、住民税が原則非課税になる。年金収入には給与所得にはない公的年金控除(65歳以上は1人につき120万円)が認められるからだ。医療保険料は自治体によって金額が違うが、東京都世田谷区の居住者なら年金から国民健康保険料と介護保険料で月額約1万9400円天引きされ、手取りは20万円ほどになる。

 ところが、蒲島氏の試算では、同じ世田谷区に住んで65歳以降に月額22万円の給料を得るケースでは、所得税・住民税や健康保険・介護保険料に年金保険料まで加えた約4万6000円が源泉徴収されて手取りは17万4000円になる。年金収入の時よりなんと2万6000円も低い。

 政府は働き方改革で「元気な高齢者は働いて年金の担い手になってくれ」と推奨しているが、74歳まで働けば年金保険料を払わされるばかりか、年金生活なら取られない税金までしっかり負担させられ、高齢者が働けば働くほど奪われる仕組みなのだ。蒲島氏が語る。

「ハッピーリタイアをあきらめて年金と同額を働いて稼いでも、従来の年金生活の水準は維持できない。もっと切り詰めなければならなくなるのです」

※週刊ポスト2017年9月8日号

関連記事

トピックス

なかやまきんに君が参加した“謎の妖怪セミナー”とは…
なかやまきんに君が通う“謎の妖怪セミナー”の仰天内容〈悪いことは妖怪のせい〉〈サントリー製品はすべて妖怪〉出演したサントリーのウェブCMは大丈夫か
週刊ポスト
令和6年度 各種団体の主な要望と回答【要約版】
【自民党・内部報告書入手】業界に補助金バラ撒き、税制優遇のオンパレード 「国民から召し上げたカネを業界に配っている」と荻原博子氏
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン