三月場所デビューした群馬県前橋市出身の朝日丸(柔道経験者だが、これまた高校中退後アルバイトをしていた)と、この場所より前相撲を取るモンゴル出身の朝日龍と比較して、千葉県松戸市出身の朝日錦は東京近郊ネイティブなので土地勘が優れている。
そしてなにより、彼らより二場所も早くから相撲界を知っている頼れる兄弟子なのだ。百七十センチに満たない朝日錦が、三周りも大きい二人を引率して国技館にやってきていた。ちょんまげを結うと表情も引き締まり、筋肉も付いてきてどんどんお相撲さんらしくなってきた。
今年になって、親方の息子の松澤と、先の元テレビマン高木が入門。鳥取城北高校で相撲を学んだ朝日龍は、幕下中位で奮闘中。強さを近くで見て吸収しろ、と期待されてのことだろう。部屋を越えて横綱・日馬富士の付け人にも抜擢された。一年、いや半年で十両に昇進するかもしれない。しかし、どんなに番付を追い抜いたとしても朝日錦が一番弟子であることは動かない。
朝日山親方は、仮に強くなれなかったとしてもどこの世界でも通用するようにしつけをして、仕事を紹介して送り出すと約束して弟子にしているという。ちゃんこ作りも掃除も、部屋に出入りする大人への対応も朝日錦にみんな教わっていく。いいなあ、と私は思う。役目を持った時に少年は成長していく。そういうプロセスを、朝日山親方と朝日錦に見せてもらっている。
※週刊ポスト2017年9月8日号