捕手論に入ると、“ノムさん節”は一層鋭さを増す。
「オレは南海に入った当時、日本のプロにはキャッチャーを育てられる指導者がいないと思ったから、現役時代から自費でアメリカの教育リーグやワールドシリーズの試合を見に行ったもんだよ。今の選手は大金を稼ぎながら、そういう研究に金を使おうとしない」
入団時の南海を率いていたのは、史上最多勝監督である鶴岡一人監督。宿敵・西鉄の主砲、中西太にホームランを打たれると「何を投げさせた」と聞かれ、ストレートだと答えると「バカたれ、追い込んでストレート勝負はダメなんだ」と怒鳴られ、変化球だと「追い込んでからカーブを投げるやつがあるか」と怒られた。
そうした経験を踏まえて、中村にこんなメッセージを送る。
「要するに、自分で勉強する以外にない。プロでも、キャッチャーについての専門知識は誰かに教えてもらうものではなく、自分で蓄えていくしかないんだ」
※週刊ポスト2017年9月15日号