その吉野氏に被災者の期待を裏切る疑惑が浮上した。震災復興にはこれまでに多額の税金が投じられている。その中の1つに「ふくしま産業復興企業立地補助金」がある。
同補助金は震災翌年の2012年に福島県が創設。県内で工場などを新設・増設する企業に補助金を支給し、地域の雇用を確保することを目的とする。主体は福島県だが、その財源約2000億円のほぼ全額は経済産業省からの補助金だ。現在までに約500の企業が県から指定を受け、「ふくしま産業復興企業立地補助金」を交付されている。
福島県内の雇用は今なお厳しい現状にあり、県内就職件数は、震災が発生した2011年の4万9596件から年々減少し、2015年には3万8554件になっている。その状況を改善するための補助金のはずが、復興を先導する吉野氏の政治団体に流れていた。
吉野氏が代表を務める「自民党福島県第五選挙区支部」は、2015年12月に福島県内の木材製材会社から12万円の献金を受けているが、この製材会社は同年3月に県から9750万円の補助金を交付されていた。政治資金問題に詳しい岩井奉信・日本大学法学部教授が説明する。
「政治資金規正法により、国から補助金の交付を受けた企業は交付決定日から1年間は政治献金できないと定められています。補助金を配分する立場にある政治家に対して、補助金交付の見返り献金が行なわれないようにするための規定です」
製材会社から吉野氏への献金は、政治資金規正法に抵触する可能性が出てくるのだ。ちなみに「1年ルール」には当てはまらないものの、吉野氏は2013~2015年の間にこの補助金制度において県から指定された4社から合計678万円もの献金を受けていた。前出の製材会社の2013~2015年分を含めるとその合計額は714万円になる。果たしてそれは、「福島の雇用促進のため」という目的に適うものなのだろうか。