薩軍の戦いと大東亜戦争がオーバーラップしたのだ。戦争は避けるべきものだが、戦わざるを得ないときもある。

 作家・林房雄が著した『大東亜戦争肯定論』には、大東亜戦争に至る近代日本のプロセスが細かく歴史的に書かれている。林は太平洋戦争を「東亜百年戦争」と表現した。先の大戦は明治維新の前から、ロシア艦隊を皮切りに西洋の艦隊が日本近海に次々に現れて鎖国日本を脅かした頃から始まっていたと捉え、幕末の攘夷から西洋と対峙せざるを得なかった国際情勢を指摘した。馬関・薩英戦争から始まり、それが日清・日露戦争を経て、支那事変、そして大東亜戦争へと続いたという興味深い考え方だ。

 日本人は戦後、自分たちで戦争の責任をあまり考えてこなかった。終戦から72年、大東亜戦争を明治10年の西南戦争と重ねて考える視座は、あの大戦のあり方を主体的に問う上で重要である。

 西郷の精神を形成したのは陽明学だと言われる。儒学のなかでも社会秩序の形成を重視する朱子学に対する“反乱”として「今の社会はこれでいいのか」という行動的な問いを突きつけるのが陽明学だ。「知行合一」を掲げ、知っていて行わないのは、知らないことと同じであるとする。抽象的、理念的なものではなく、実践道徳だ。陽明学は日本史上で時折、噴出し、小さくない影響を与えている。

 天保の大飢饉で困窮した民衆を救済しようとしない奉行所に対して、義憤を感じ蹶起した元与力・大塩平八郎は陽明学者だった。

 戦後25年、市ヶ谷の自衛隊駐屯地で、自衛隊が米軍の傭兵になってしまうことを憂い、憲法改正のための蹶起を呼びかけた後に割腹自殺した三島由紀夫も陽明学だった。いずれも社会に対する「これでよいのか」という問いとして表出した。

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