確かに日本では屋内規制ばかりが焦点になっているが、屋外でもたばこが吸える公共の喫煙所や店頭の灰皿がどんどん撤去され、喫煙スペースを探すのが難しくなっている。このままオリンピックに突入すれば、東京の街中が吸い殻だらけになる恐れすらある。
日本の喫煙マナーの良さは、東京の次に五輪開催を控えるパリの喫煙事情と比べても明らかだ。8月にスポーツの世界大会でフランスを訪れたジャーナリストは、パリ市内のあまりの汚さに驚いたという。
「私はベルシー・アリーナというパリ市12区にある大きな競技場に取材に行ったのですが、新幹線や地下鉄が乗り入れるリヨン駅を降りた途端、ホームでたばこに火をつけながら歩く女性がいたり、歩道や木陰に平然と吸い殻をポイ捨てする人がいたりと、まったくマナーがなっておらず、不快な気分になりました。
おまけに犬の糞があちこちに落ちていて、夜には立小便をする男性の姿まで目撃してしまい……。オシャレなパリのイメージが一気に崩れました。現地に駐在する記者に聞くと、『パリ市民は街をキレイにするという意識がないんだよ』と教えられ愕然としました」
だが、こんなフランスでもたばこに関する規制は行われている。
WHOが今年発表した報告では、フランスの喫煙率は27.4%と日本(19.1%)よりも高く、長らく喫煙に寛容な国として知られてきた。だが、国民の健康増進や若年層の喫煙率を減らす目的で2008年に喫煙制限がかけられた。学校やオフィス、駅、美術館などの施設のほか、カフェやレストランなど飲食店でも喫煙が全面禁止となったのだ。
それ以降、「たばこを吸うなら屋根のない外へ」との認識が広がった。飲食店でも店内でたばこを吸う客は見られない代わりに、喫煙者は外のテラス席を確保するのが当たり前の光景になっているという。
また、町中でも駅舎やホテルの外、歩道の脇など至るところに灰皿やたばこの火消しがついたゴミ箱が設置されているのだが、日本のように「吸い殻は灰皿に捨てる」という“常識”は通じないのか、前述した通りポイ捨て行為が後を絶たない。パリ市内で1年間に回収される吸い殻の量が350トンに及ぶとの話もあるほどだ。
駅舎内などでは喫煙やポイ捨てをした人に罰則を科す旨の表示をするところもあるが、まったく無視されているという。
「滞在中に罰金を取られている喫煙者を見たことがないし、現地の人は誰ひとり歩きたばこやポイ捨て行為に関心を示さない。たばこの煙がかかるからやめて欲しいと睨もうものなら、『近くにいるあなたが悪い!』と言わんばかりに睨み返される始末。
フランスでは受動喫煙なんて議論する以前の問題がたくさんある。そう考えると、日本の喫煙マナーがいかに優秀かに気付かされます。むしろ日本はあちこちに禁煙表示が貼られるなど、たばこ規制が過剰なのではと思ってしまったほどです」(前出のジャーナリスト)