整備を担当したのはシンガポールのSASCO社。頭上のスペースにマスクを収納する際、チューブが絡まってしまっていたのだ。なおSASCO社は、2005年にJALのジャンボ機を整備した際、左右のエンジンを逆に装着するという信じ難いミスも犯している。
こうした海外MRO企業による整備が拡大したことと、今回のJAL機エンジン火災に関連はないのか。JAL広報部はこう答えた。
「事故機は全て国内で整備を行なってきた機体です。海外委託が事故につながったということではありません」
ただし、海外MRO企業への整備委託が3割程度(2016年は約5割)あることは認めた上で、次のように説明する。
「海外への整備委託は、コスト削減に主眼を置くものではありません。保有機の増加により、国内整備工場のキャパシティを超えた部分を、海外の整備工場で実施しています」(同前)
海外の工場で整備した機体に今もトラブルが続いているのではないか、という問いには、「整備担当者に確認しましたが、記録のボリュームが大きすぎてすぐには回答が難しい。ただこの2~3年でそうしたトラブルが起きたとは聞いておりません」とした。
一方、ANA広報部は次のように回答した。
「整備の品質について、海外と国内の間に全く差はないものと考えています。海外で整備された航空機を受け取る時は、当社のスペシャリストチームを派遣して受領検査を行なっている。過去のマスクの不具合についても再発防止策を講じており、現在では問題は起きていません」