◆社内からも不安の声が……
日本の航空各社は1990年代半ばから、機体に必要な整備や修理を国交省が認定するアジアの工場に委託していた。
とりわけ日本や米国の航空会社からの需要を取り込んで急速に規模を拡大してきたのが、中国福建省に本社を置く「TAECO社」とシンガポールの「SASCO社」という2社の整備専門会社(MRO企業)だ。そういった中国やシンガポールのMRO企業には、どのような整備が委託されているのか。
一つはおよそ1年に一度のペースで行なわれる「C整備」と呼ばれる比較的軽微なメンテナンスで、10日ほどかけて配管や配線が正しく接続されているかを点検。可動部分のオイルや備品の交換を実施する。人間でいえば「定期健診」のようなものだ。
もう一つ、約5年に一度行なう「M整備」は「飛行機の人間ドック」と呼ばれ、点検・整備は広範囲に及ぶ。
内装だけでなく、ロゴの入った外装のペンキもすべて剥がし、ユニットトイレも分解する。約1か月をかけてシステム系統に異常がないかを確認。必要な修理を行なって、最後は表面の防錆処置や再塗装まで手がけて、機体の安全性能に深く関与する作業である。
航空各社がMRO企業への委託を推進した2000年代前半、JALでは経営合理化に反対する労働組合が、海外委託整備への不安と懸念を表明。当時、JALでは海外で整備された機体に不具合が頻発していた。その一例が、「日本航空乗員組合」の『乗員速報』(2006年10月8日号)に掲載された「燃料タンク内部でマニュアル発見」という一件だ。