「今回は脚本家や演出助手も含めて主要関係者がみんな女性というケースでした。女性ばかりが中心スタッフにそろった現場って、なかなか難しいんですよ。今回も女性優位の劇団の中で何人かいた男性陣はなかなか声高く意見表明はできない雰囲気でした」
たしかに、鈴木は一本気な性格で歯に衣着せぬタイプ。プロ意識が高い彼女にとって、舞台初演出にかける意気込みは並々ならぬものだった。演出助手も、大泉洋が率いる超人気俳優集団『TEAM NACS』や人気演出家・赤堀雅秋さんの舞台の演出補助を務めるなど経験、実力とも一流。
「演出助手は個性的な俳優陣を力でまとめる剛腕タイプ。鈴木さんと演出助手というパワフルなふたりがタッグを組んだとあって、今回の舞台稽古でも出演者に遠慮はなかったようです。通常の舞台であれば当たり前の光景ですが、女性の怒声に慣れない人がいたのは確かかもしれません」(舞台スタッフ)
元準ミス・インターナショナル日本代表の鳳と30年以上のキャリアとはいえ「活動期間2年」(牧野のブログより)という牧野。
「一方、鈴木さんは日本を代表する演出家の大舞台から下北沢の劇場まで舞台経験の幅は大きいですから、相当厳しい思いもしてきたでしょう。そんな熱意がかみ合わず事態がこじれた面があります」(前出・舞台スタッフ)
◆「悩みやストレス」最も抱えるのは40代女性
もしそこに「男性」が1人でも交じっていれば、雰囲気は変わっていたのか。コラムニストの辛酸なめ子さんはこう見る。
「女性は、男性よりも派閥を作りやすい。しかも、その派閥が揺らぎやすいから、女性だけの集団になると、とにかく気が休まらないものなんです。実際、降板した女優の1人のブログを読むと、飲み会などで結束力が強まる半面、気に入らないキャストの悪口を言う空気になっていたようなことが書かれています。女性同士だと、そうした感情の行き違いが生じやすい。
たとえ厳しい演技指導だったとしても、蜷川幸雄さんのようなベテラン演出家だったら、叱った後のフォローも上手かった。でも、砂羽さんが舞台初演出ということもあって、“女性同士は難しい”ことがわかっていても、フォローしきれなかったのかもしれませんね」
とはいえ、いくら感情のすれ違いがあったからといって、初日の2日前に降板にまで至ってしまうとは、“やりすぎ感”が否めない。稲増龍夫法政大教授(社会心理学)が指摘する。
「社会全体的に最近、20~40代の働き盛りの女性がストレスを抱えやすく、人間関係の軋轢もエスカレートしやすい状況にあるんです」