芸能

立川志の輔 同じ物語でも観る度に新鮮で説得力も増す

人気者・志の輔の魅力を落語通が紹介

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、いま最も客を呼べる落語家の立川志の輔について紹介する。

 * * *
 いま最も観客動員力がある落語家、立川志の輔。彼は通常の独演会で全国を精力的に廻る他、独特な「毎年恒例の企画公演」をいくつも行なっている。

 近代落語の祖・三遊亭圓朝が明治17年に人形町末広で15日間かけて口演した『怪談牡丹灯籠』。通しで演じると20時間は掛かるというこの長編人情噺を2時間半ですべて演じる「恒例牡丹灯籠 志の輔らくごin下北沢」(本多劇場)は2006年が初演。今年は7月後半に9公演行なわれ、僕は28日に観た。

 初演以来ほぼ毎年観ているのだが、まったく飽きないどころか観るたびに新鮮で、年に一度しか聴けないことが残念だ。それくらい、よくできている。

 公演は2部構成。第1部は浴衣姿の志の輔がステージに立ち、巨大パネルの人物相関図を用いて『牡丹灯籠』の前半部分を語る。ここには「カラン、コロン」で有名な怪談は出てこない。志の輔はこの第1部で、『牡丹灯籠』が「孝助という男が主人の仇を討つ物語」なのだということをわかりやすく教えてくれる。

 10時間分の内容を1時間に凝縮しながら、それが単なるあらすじではなく見事な「芸」になっているのは、自らの視点で物語を再構築してあるからこそ。最後は圓朝作品本来の流れから離れ、後半に出てくるべき「孝助がある男に出くわす場面」のさわりを演じ、「後半の主役はこの男です。いったい、この相関図の中の誰なのでしょうか」と、含みを持たせて前半を締めくくる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン