国際情報

習近平氏の清貧アピール 「晩飯2500円」の領収書公開も

反腐敗キャンペーンは続く 時事通信フォト

 中国でも政治的節目が近付いている。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 いや、トップへの胡麻すりもここまでやれば逆に気持ちが良い、というべきか──。19大(中国共産党第19期全国代表大会)を前に総書記(国家主席、党中央軍事委員会主席)の功績が強調されるのは慣例だとしても、ちょっとやり過ぎではないかという印象はぬぐえない。

 大会直前になって伝統メディアへの締め付けを強化したのはまだいいとしても、いわば内輪の会話ともいえる「グループチャット」内の言論にまで監視の目を光らせ、逮捕者まで出している。そんな窮屈さの一方で、伝統メディアが「右にならえ」とばかりに総書記の功績を競って報じているのだからなおさらだ。批判が基本である日本のメディアとは明らかに文化が違っていることを意識させられるのだ。

 さて、前置きが長くなったが、その総書記の徹底した「模範生」としての姿を報道した『人民日報』の話題だ。タイトルは、〈習近平の晩飯代とそのメニューが明らかに! 総書記がいかに八項規定を実践しているかを見よ〉である。

 要するにメディアが習近平の訪れたレストランで、そのときの領収書と伝票を入手したという体裁の記事だが、これが「宣伝」であることは言を俟たない。もちろん、といっても中国のメディアは基本的にみな党や他の政府系機関の機関紙なのだから、そもそもの役割をはたしているに過ぎない。

 それにしても、と思うのはその記事で報じられている総書記の「清貧」ぶりなのだ。

 同紙が公開したのは2012年12月に総書記が河北省阜平県を訪れた際のものなど複数あるが、阜平では随行員と数名で囲んだテーブルで注文しているのはスープを含めて五皿。また3月に訪れた河南省での領収書の金額はわずか160元(約2560円)だったという。

 この行いが、現在、全党員に課している八項規定(ぜい沢禁止などを定めた規定)を自ら実践しているとなるのだ。

 もちろん総書記の過激なトラ退治(反腐敗キャンペーンの中で党の大幹部を何人もとらえたことを指す)をみれば、総書記が有言実行であることは理解できるのだが、これではちょっと息苦しくないのか。ちょっと心配になってしまうのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン