同じく芸人ならではの強みを発揮しているのがバカリズムだ。9月放送の『FNS 27時間テレビ にほんのれきし』の中で、戦国時代、幕末それぞれを舞台にした時代劇を手がけた。
その執筆に際し、インタビューに答えた彼は、戦国時代について「正直思い入れは全くないです(笑)」と語り、「とにかく笑えるものにしよう」と筆をふるったという。
時代劇はとかく時代考証を必要とするが、芸人の脚本家は、そうしたプレッシャーを過度に感じず、普段ネタを書く延長線上で制約なく書けるというメリットがあるのではないか。
そんなバカリズムの「兼業」ゆえの身軽さが表れているドラマが、初の連ドラ担当作品となった『素敵な選TAXI』(フジテレビ系)。最終話にこんな場面があった。
劇中で放送されている刑事ドラマ「犯罪刑事(デカ)」の中で、主人公の「犯罪刑事」が殉死の直前、「たばこを吸わせてくれ」と同僚の「普通刑事」にお願いする。だが彼が言った言葉は意外なものだった。「俺、たばこ吸わないんだ。それに、たばこを外で吸うことは条例で禁止されている」。犯罪刑事はその答えにあっけにとられながら死んでいった。
本業の書き手であれば、こうしたシニカルなセリフはおそらく書けないだろう。しかし、たばこ離れが進む時代の流れにあらがわず、さらりと笑いに変えてしまう“しなやかさ”をバカリズムは持っている。
このように「芸人脚本家」は、その人が持つイメージをそのまま脚本に反映できるため、ある程度の無茶も許される。
◇新たな人材発掘への期待