国内

子育て支援サービスの裏で性犯罪が続発、というジレンマ

子育て支援サービスを利用する共働き世帯は多い

 児童ポルノや買春、それにまつわるビジネスなどで性的搾取の被害に遭う子供が後を絶たない。簡単に子供を他人に預けるからだと被害者側を非難する心ない声も聞こえるが、労働力不足が報告され、政府は1億総活躍社会を呼びかけ、働ける人はすべて働こうという時代に、家族をケアするサービスの利用は当然だろう。ライターの森鷹久氏が、犯罪の危険があってもサービス利用を続けねばならない事情を追った。

 * * *
 9月29日、一時預かりをしていた男子児童どうしにわいせつな行為をさせたとして逮捕されたのは東京都荒川区に住む清掃作業員の男(41)。

 男は「子育て支援サイト」に登録し、依頼が来た保護者等からシッターとして男児二人を預かっていたが、その後、男の子の母親が警察に届け出て事件が発覚した。男は容疑を認め「小さい男の子に興味があった」と供述しているというが、既視感を覚えるのは、筆者だけではないはずだ。

 今年2月には、現役の教員や家庭教師を含む男児ポルノ愛好家グループの男らが、強制わいせつや児童買春、児童ポルノ法違反の疑いで逮捕、追送検されている。被害者は170人近くとみられ、男児のポルノ画像10万点以上が押収された。一昨年にも、関西地方で児童ポルノ愛好家ら男5人が児童買春などの疑いで逮捕され、小中学生ばかり47人が被害に遭っている。

 SNSなどを巧みに利用して、表からは見えにくいところで児童ポルノ愛好家らが「組織」を結成。そこで自らが違法に撮影などした画像や映像を交換しあったり、イベントと銘打ち、騙して連れてきた男児にわいせつ行為を働く、というのが最近のパターンだ。そして、容疑者たちに共通するのは、教師や家庭教師、ダンサーや、清掃員といった子供への理解がある「善人」を装い、児童やその保護者に近づいていくという点だ。

「まさかという思い。子供好きの”いい人たち”だと思っていましたから、ショックです」

 肩を震わせ、驚きと怒りが混ざり合ったような様子で筆者に語るのは、今年2月に逮捕された容疑者らが主催していたイベントに、小学二年生の男児とともに参加した関東地方在住の主婦Aさんだ。

 Aさん一家は共働きで、夫ともども土日にも出勤することも少なくない。そういった環境の中で、容疑者らがイベントを開催し、子供の面倒を見てくれていることにありがたみを感じていた。子供もイベントを「楽しい」と話し、容疑者らをお兄ちゃんと慕っていたのだ。幸い、Aさんの子供は被害者にはなっていないというが、Aさん夫婦が受けたショックはあまりにも大きく、それまで通っていた習い事を全て辞めさせ、仕事に無理をきかせても、出来るだけ子供と一緒にいるようになった。

「いい人だった容疑者らが、実は悪魔、性欲のままに行動するケダモノだったかと思うと、それを見抜けずに子供を預けていた私たちも、反省すべきところがあるかもしれない。何よりも、恐ろしい場所に、何の疑いを抱くこともなく我が子を預けてしまっていたというのが、悔しい」

 ネットで知った、安価で自身に都合の良い託児サービスを利用した方も悪い、そもそも子供を産まなければ良いだろう──。そういった指摘が聞こえてきそうでもあるが、それは託児サービス利用の難しさや、子育て環境の厳しさを知ろうともしない無責任な発言だ。

 Aさん夫婦には、子供の世話を考えられないくらい極貧で経済的に追い詰められ、馬車馬のように働かなければならない事情はない。とはいえ、夫婦のうちどちらかが仕事をやめ、子供の世話にかかり切りになるほど余裕があるわけでもない。今後の教育費や生活費のことを考えたら、夫婦ともに働くのはごく自然な選択だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン