その夜、ボビーはインディアナポリスの黒人街のど真ん中でスピーチを行うことになっていた。キング牧師が殺されたとあっては、黒人も黙っていないかもしれない。しかし、ボビーは署長を見据えてこう言った。
「命というものは意味がある時に使って初めて価値があるのだ。私は行く」
それを聞いた署長の顔が真っ青になっていくのがわかった。彼はわきにどき道を空けた。 現代の政治家たちは理想のために命を使うのではなく、自らの政治生命を守ることが第一の目的になっている。
安倍首相の行った内閣改造などその典型だ。山積する政治的課題に取り組むためではなく、加計、森友といった疑惑によって下がった支持率を回復させるための内閣改造だ。
疑惑を招いた張本人は安倍自身なのに、他の閣僚を入れ替えれば政権維持が可能だと思っているのだ。有権者を馬鹿にするにもほどがある。 理念ある素晴らしき政治家はどこに消えたのか。
※SAPIO2017年10月号