「もちろん家族は素敵なものだけど、お金、将来、亡くなってからの問題まで考えると仕事や生活に集中できません。幸い、ぼくと妻は仲がいいから関係が続いているけど、どちらかが冷めていれば離婚してもおかしくなかった」

 ここまで夫の身勝手さに妻が苦しむケースを紹介したが、逆にがんを患った妻が夫に離婚を切り出すこともある。

 前出の河村さんもその1人だ。1999年7月に32才で結婚した河村さんは、新婚わずか1週間で子宮頸がんが発覚。幸せの絶頂での非情な告知に大きなショックを受けた河村さんは、ある決意をした。「私の場合は親が面倒を見てくれると言ったし、夫に迷惑をかけたくなかった。子宮を取るだろうから子供も産めなくなるし、まだ若い夫を私の人生につきあわせてはいけないと決めて、『離婚しましょう』と申し出ました。できれば健康な女性と再婚してくれればいいとの思いでした」(河村さん)

 夫の人生を思うがゆえの決断だったが、新妻の言葉を聞いた夫は静かにこう返答した。

「離婚はしない。一緒に生きていこう」

 河村さんが笑顔を見せる。

「夫が『今はがんが治る時代だし、子供がいない家庭もいくらでもある』と言ってくれて、嬉しい半面、本当にいいのかと苦悩しました。その時の決断は今でもよかったのかと悩むことがあります」

 現在、河村さん夫婦は、特別養子縁組した女の子と一緒に暮らしている。河村さんのような、「女性発」のがん離婚の申し出は実は少なくない。その理由について、前出の森山さんが解説する。

「がんになった女性は、夫や子供に家事や子育ての負担がかかると考えがちで、“大病になった自分とは早めに別れて新しいパートナーを見つけてほしい”と思いがち。また乳房や子宮を全摘出すると、“自分が欠落した女性であることが申し訳ない”と離婚を申し出るケースも多くなる」

※女性セブン2017年10月26日号

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