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甲子園「一塁手キック」騒動 当事者2人が初めて語った真実

敗れた大阪桐蔭ナイン(写真:時事通信フォト)


◆炎上騒動でスポーツ推薦の話が流れた

 試合後、ツイッターやYouTubeは荒れに荒れた。〈7回裏の渡部の「蹴り」は狙ってやった「殺人キック」で、蹴られた恐怖があったから中川はベースを踏み外した〉──そんなふうに断定するまとめサイトが乱立し、ツイッターやYouTubeには、問題のシーンの映像や、それをコラージュしたような画像がいくつもアップされた。

 また、続く準々決勝の広陵戦で、渡部は起用されなかった。その理由を仙台育英の佐々木順一朗監督が明言しなかったために、渡部は完全に「クロ認定」されてしまう。

 とはいえ、広陵に敗れ、仙台育英が甲子園を去ったことで、ネットの炎上も鎮火すると思っていた。

 だが、騒動は続いた。甲子園が終わり、カナダで行われたU18ワールドカップの取材から帰ってきても、渡部への誹謗中傷が続いていたのだ。未成年である18歳の高校球児が、実名をさらされながら無数の匿名アカウントに延々と追及され続ける。ちょっと異常に思えた。

 渡部がどうしているのか気になった私は、すぐに仙台育英の新チームが秋季大会を戦っていた仙台に向かった。現地で渡部の姿は確認できなかったが、そこで学校関係者から、炎上騒動によって決まっていた大学のスポーツ推薦の話が流れてしまったという衝撃の事実を知った。彼は今、騒動についてどう考えているのか。それを知るために渡部が出場予定だという国体が開催されている愛媛・松山に向かうことにした。

 冒頭でコメントを紹介したように、国体で取材した渡部は、吹っ切れたような表情をしていた。ただやはり、大阪桐蔭の試合後から不安定な心理状態に陥っていたという。

「試合後や、宿舎での自分の様子を見て、(広陵戦への出場が)無理だなと先生方も思ったのだと思います。仙台に戻ってから、学校には普通に行っていましたし、練習も3年生は自由参加なので、ちょこちょこぐらい。自分は考え込んじゃうタイプなので、(ネットで炎上していることは)気にしないようにしていました」

 甲子園での問題のプレー映像を幾度も見返してみても、渡部に明確な悪意があったとは思えない。確かに、渡部は2回戦の日本文理戦でも、凡打した場面で似たような危険とも思われる走塁をしていたが、競った試合展開の中でなんとかセーフになりたいという懸命な走塁にしか、私には見えなかった。国体での取材で渡部の優しい人柄にも触れ、その思いはより強くなった。渡部はあの走塁と、それによって起こった炎上騒動を、静かにこう振り返った。

「わざとじゃないんですけど、自分がやってしまったことなので、(責められるのは)仕方ないです。必死にプレーした結果、自分の走路が悪かった……」

 一方の大阪桐蔭の中川は、夏の甲子園での試合後に、「自分のベースを踏む位置が悪かった」とコメントを残していた。

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