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甲子園「一塁手キック」騒動 当事者2人が初めて語った真実

◆中川が渡部の部屋を訪ねた意図

 秋の国体には大阪桐蔭も出場していた。そこで渡部にとって思わぬ再会が待っていた。

「中川が自分の部屋を訪ねてきてくれたんです。あの件については話していないですけど、中川がキャプテンになった大阪桐蔭の新チームの話とか、大阪桐蔭の寮生活の話とか、ずっと話していました。まあ、普通の会話です。あとはお互いのタオルを交換したり。やっぱり、嬉しかったですよ」

 外野は騒ぎ立てても、両者にわだかまりなど存在しなかった。大阪桐蔭の中川にも、渡部の部屋を訪ねた意図を聞いた。

「宿舎が同じだったんですよね。本当は、他の出場校の選手の部屋に行くことは、大阪桐蔭では禁止なんですけど(笑)、携帯電話も禁止ですから連絡を取ろうと思っても取れないんです。ああいうことがあったので、少しの時間だけでも話したいな、と」

 1学年下の中川の高校野球生活はもう1年続く。大阪桐蔭の主将になった中川は、新チームではサードを守るが、ベースから足が離れてしまった仙台育英戦の自身のプレーを教訓にして、チームをまとめている。

「接触したプレーに関しては自分のファーストベースを踏む位置も悪かった。最後の場面も、(二死1、2塁の状況でショートが)ファーストに投げてくるとは思っていなかったから、ベースを踏み損なってしまった。新チームとなってから、守備では『100%の確認』ということを徹底しています。100%の確信を持って、プレーしなければいけないと思っています。

 現在の目標は、大阪桐蔭にある選抜優勝旗を、41人の部員全員で返しに行って、選抜を連覇してもう一度、持ち帰りたい。今はそのために一戦一戦を大切に戦っている途中なんですけど、最大の目標は春夏連覇を成し遂げることだと思っています」

 甲子園の一塁ベース上で交錯したふたりの球児の野球人生は、松山の地で再び交錯した。あの炎上騒動によって、決まっていた大学へのスポーツ推薦がご破算となった渡部のもとには、仙台市内の別の大学から誘いの声がかかり、AO入試を受験予定だという。もちろん、大学でも野球を続けるつもりだ。

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