1976年のNHK大河ドラマ『風と雲と虹と』では、主人公の平将門を演じている。
「NHKのプロデューサーがウチに来まして、武田信玄や加藤清正の役を提案されたのですが、私が『将門はどうですか』と言ってみたところ、それで決まったんです。まさか本当に決まるとは思いませんでした。
将門は坂東のために立ちあがり、坂東のために生きた男で、そこに惹かれました。朝廷から虐げられ、弓を引いた人で最後は悲劇的に亡くなりますが、それだけに私には思い入れの強い役です。印象深いのは、京都から坂東へ帰る場面です。地面に倒れて土をグッと握って『帰ろう、坂東へ』と言う。あそこに将門の気持ちが表れていました。
だからといって特別な覚悟はありません。役をやる時、僕は自分の身体を全部使って、その役に住んでもらうといいますか、入ってもらう。そのために、本の中で役がどうすれば生き生きと生活できるのかを考えながら、いつも台本を読んでいます」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館刊)が発売中!
■撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2017年10月27日号