入院中の高齢者が病院を出され、特養にも待機待ちで入居できないとなると、苦しむのは高齢者だけではない。現役世代は年老いた親の介護に一層追われ、仕事が続けられない現役サラリーマンが増えていく。
安倍晋三・首相は「全世代型の社会保障に転換する」と消費税10%引き上げによる税収の使途を見直し、「幼児教育無償化」という子育て世代に受けのいい政策を掲げた。が、そのツケは高齢者の医療・介護分野に回される。2年前にアベノミクス第2ステージとして打ち出した「介護離職者ゼロ」の目標はいつのまにか消され、幼児教育無償化が本当に実施されるかどうかわからないうちに、来年4月から介護離職者を増やす計画が先行して進められるのだ。
そして2019年10月には消費税率が10%に上がる。
それ以外にも、外国人観光客の増加でかさむ行政経費をまかなうために日本人の海外旅行に課税する「観光税」や、“タバコのない五輪”を大義名分にした「電子タバコ税」といった五輪便乗の増税メニューが目白押しだ。
その陰で五輪後は消費税増税不況と五輪不況が国民生活を襲い、社会には高齢者の介護難民と職を失った介護離職者があふれかえる。
※週刊ポスト2017年11月3日号