「まさにネズミ小僧です。詐欺だろうがなんだろうが、親孝行には変わりない」
被害者不在の全く身勝手な暴論に違いないが、鈴木氏(仮名)は以前、高額な床下換気扇を高齢者に売りつける「リフォーム詐欺」によって数千万円の収入を得たこともある。鈴木氏は、多くの高齢者の貯蓄を掠め取ったにもかかわらず、都合のよい解釈によって、自身の行為を正当化する。
「金持ちで身寄りのない老人の茶飲み相手にもなっていました。一緒に買い物に付き合うこともあれば、土産を持っていくこともあった。老人と俺らには信頼関係がありましたからね。だからリフォーム代金が高くても、老人は金を払ってくれたんです。俺らと老人の問題で、外野からうるさく言われる筋合いはない。老人から頼られ、稼いだ金で家族を養い、両親にもカネを送った。人助けだとも思ってるし、誰も損はしていない」(鈴木氏)
そんな鈴木氏に、自分の家族が、その老人たちと同じような目にあったらどうか? と問うと、閉口したのちに、苦し紛れの謎理論を展開した。
「俺たちは貧乏人じゃないですか。貧乏人から取るのはワルですよ。俺たちは金持ちしか狙わないし、奴らのケツの穴の毛までむしり取るつもりはない。世の中平等な方がいいじゃないですか、平等が。極悪人みたいに言われたらムカつきますよ……」
このような認識の人間が存在する以上、オレオレ詐欺が減るどころか、あらゆる手段に形を変えて特殊詐欺事案が増加するのも仕方のないことなのか。親のために役立つなら犯罪も認められる……というヤクザな理論が浸透しつつあるとするならば、結局その先には家族や友人といった守るべきコミュニティが崩壊してしまう殺伐とした未来が存在することを、彼らは理解できないらしい。