国内

振り込め詐欺犯「死に金を貧乏人に再分配する」身勝手持論

振り込め詐欺犯は身勝手な持論で犯罪を正当化

 主に高齢者宅へ電話をかけ、離れて暮らす家族のふりをして多額の金を振り込ませる「振り込め詐欺」は、2000年代に入って急増した。警察と金融機関が協力して詳しい手口を広く知らしめ、振り込め犯の取り締まりも厳しく行われているが、特殊詐欺撲滅にはほど遠い。特殊詐欺が続けられるのは、詐欺犯たちが犯行を正当化し罪悪感を消している背景があった。ライターの森鷹久氏が、その奇妙な理屈についてリポートする。

 * * *
「金持ちで余裕のある奴から、奴らが沈まないくらいしか盗りませんよ」

 こううそぶくのは、かつてオレオレ詐欺(特殊詐欺)に参画し、一千万円以上の収入を得た経験がある男性・松岡氏(仮名)だ。未だ減る傾向にないオレオレ詐欺の被害だが、その理由は、オレオレ詐欺に手を染める連中が振りかざす驚くべき身勝手な持論に透けて見えてくる。

 松岡氏は、部下十数名を率いる「かけ子」(※電話をかけてだます役)チームのトップだった。一般的な会社組織でいえば「部長職」で、配下には課長や係長、主任に相当する部下もいた。十数名の部下のうち半数以上になんらかの「肩書き」を与えていたのは、上昇志向の強い彼らのモチベーションをさらに上げる為だった。

「連中の上昇志向が強い理由は、皆ハングリーなんです。貧乏家庭の出身者が多く、とにかくカネが欲しい。小銭の為にリーマン(会社員)はやってられないが、デカいカネの為には真面目に働くことを厭わない。朝礼や終礼は必ず定刻に全員参加。日報つけたり統計を欠かさず取ったり、みんな真面目でした。だから収益もガンガン右肩上がり」(松岡氏)

 真面目にやっていくら収益をあげようと、それは単なる犯罪行為でしかない。松岡氏が徹底的に行ったのは、部下に「被害者意識」を刷り込ませることだ。これによって、部下は犯罪を犯罪と思わなくなり、仕事能率は確実にアップしたのだという。

「格差社会でしょう。年寄りは裕福、若者は貧乏。俺らは年金すらもらえない。ともなれば、溜め込んでる金持ちからいくらか取ったところで何が悪いのかと。死に金を俺らが活かす、貧乏人に再分配する。現代版の”ネズミ小僧”だと本気で信じている連中もいて、月に100万稼ぐのに、実家に70万仕送りしているやつもいました。中には有名大卒の経歴を持つ手下もいた。こっちが刷り込まなくても、すでに弱者意識を持っている若者ですよね」(松岡氏)

 今年10月、オレオレ詐欺グループのメンバーだった息子から、現金400万円を受け取ったとして宮崎市在住のパート従業員の女が組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)容疑で逮捕された。息子は全国で12億円以上をだまし取っていた特殊詐欺グループのメンバーとみられているが、母親は「どういう金か知らなかった」と供述している。オレオレ詐欺に手を染めた経験のある別の男性・鈴木氏は、この息子を「孝行息子」と評する。

関連記事

トピックス

小島瑠璃子(時事通信フォト)
《亡き夫の“遺産”と向き合う》小島瑠璃子、サウナ事業を継ぎながら歩む「女性社長」「母」としての道…芸能界復帰にも“後ろ向きではない”との証言も
NEWSポストセブン
会見で出場辞退を発表した広陵高校・堀正和校長
《海外でも”いじめスキャンダル”と波紋》広陵高校「説明会で質問なし」に見え隠れする「進路問題」 ”監督の思し召し”が進学先まで左右する強豪校の実態「有力大学の推薦枠は完全な椅子取りゲーム」 
NEWSポストセブン
起訴に関する言及を拒否した大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ハワイ高級リゾート開発を巡って訴えられる 通訳の次は代理人…サポートするはずの人物による“裏切りの連鎖” 
女性セブン
日本体操協会・新体操部門の強化本部長、村田由香里氏(時事通信フォト)
新体操フェアリージャパンのパワハラ問題 日本体操協会「第三者機関による評価報告」が“非公表”の不可解 スポーツ庁も「一般論として外部への公表をするよう示してきた」と指摘
NEWSポストセブン
スキンヘッドで裸芸を得意とした井手らっきょさん
《僕、今は1人です》熊本移住7年の井手らっきょ(65)、長年連れ添った年上妻との離婚を告白「このまま何かあったら…」就寝時に不安になることも
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
《広陵高校、暴力問題で甲子園出場辞退》高校野球でのトラブル報告は「年間1000件以上」でも高野連は“あくまで受け身” 処分に消極的な体質が招いた最悪の結果 
女性セブン
代理人・バレロ氏(右)には大谷翔平も信頼を寄せている(時事通信フォト)
大谷翔平が巻き込まれた「豪華ハワイ別荘」訴訟トラブル ビッグビジネスに走る代理人・バレロ氏の“魂胆”と大谷が“絶大なる信頼”を置く理由
週刊ポスト
お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
NEWSポストセブン