「出雲の4区で、東海大の鬼塚選手と東洋大の1年生・吉川洋次がトップを争って並走しました。その様子を撮影した私の相棒・マニアさんの撮影した写真を見るとわかるのですが、鬼塚選手が足裏のつま先寄りから接地しているのに対し、吉川選手はかかと寄りから接地している。つまり、鬼塚選手のほうが“ナイキの厚底”をより活かせる走り方をしていたのです。このシューズの特性を活かす走り方でロードの長距離を押し続ける技術と体力が東洋大の1年生にはまだ足りなかったのか。そのあたりが、この区間で後続を一気に引き離して優勝した東海大と5位の東洋大の差になったように見えるのです」
さらに、このシューズの“威力”を印象づけたのが10月14日の箱根駅伝予選会だったという。昨年、88回出場連続を逃した中央大が2年ぶりに箱根本戦の切符を勝ち取って話題となったが、その中央大の主将・舟津彰馬(2年)も、同じ靴を履いていたのだ。西本氏がいう。
「舟津主将は中距離(800m、1500m)が本職の選手ですが、予選会では20kmを59分台で走ってみせました。改めて、トラックのスピードが長距離ロードに活かせる靴という印象が強くなりました」
舟津は予選会翌日、ツイッター上で自身が履いたシューズがヴェイパーフライ4%であることを明かし、その感想を〈一言で言うとヤバイです〉と投稿している。
「今のところ、ナイキからウェア提供を受けている神奈川大や駒澤大の選手たちは、どのシューズを履くかは個人の裁量に任されており、ナイキ以外のシューズも履いています。本番のレース用のシューズを変えるのは、陸上選手にとって簡単にできる決断ではありませんが、出雲や箱根予選会で“ナイキ勢”が揃って好成績を残したことは、多くの関係者が認識しているはずです。全日本で何人が“ナイキの厚底”に履き替えてくるか。数えてチェックしたいと思っているほどです」(西本氏)