以後、アメリカのミシェル・クワンやタラ・リピンスキーらが台頭し、日本選手は再び世界の後塵を拝すようになるが、伊藤が蒔いた種は確かに育っていた。伊藤と同じ名古屋市出身の安藤美姫や浅田姉妹らが頭角を現しはじめ、それまでボランティア的だったスケート連盟も、第2の伊藤みどりの発掘と育成に本腰を入れ始める。

◆重要だった「トリノ五輪金メダル」と浅田真央

 その試みが結実したのが、2006年のトリノ五輪での荒川静香(35才)の金メダル獲得だった。フィギュアスケートに詳しいスポーツジャーナリストの野口美恵氏はこう話す。

「スケート連盟の強化合宿の1期生が荒川さんでした。日本人3人目となる世界選手権優勝を果たし、トリノ五輪でも日本人初の金メダルを取った。“イナバウアー”など流行語も生み出し、この後浅田さんに続く、フィギュアブームの礎を築きました。伊藤さんが蒔いた種が、ようやく花開いたのです」

 荒川は金メダルを取った3か月後に引退を表明。その後を引き継ぐように浅田真央の快進撃が始まる。浅田の世界での戦いぶりには、日本中が大きな声援を送った。スポーツジャーナリストの折山淑美氏が言う。

「もし荒川さんが金メダルを取っただけであれば、日本のフィギュア界がここまで発展することはなかったでしょう。浅田さんはわずか15才で2005年のグランプリファイナルで優勝したものの年齢制限のため、翌年のトリノ五輪に出場できなかったことに始まり、2010年のバンクーバー五輪で、金メダルの大本命といわれながら、ライバルのキム・ヨナに敗れ銀メダル。

 ラストチャンスとして挑んだ2014年のソチ五輪のショートで信じられないミスを繰り返しながらも、フリーで奇跡の演技を披露して日本中を感動させたりと、ドラマ性に満ちたものでした。彼女の活躍が、フィギュアの裾野を広げる大きなきっかけになった。現役選手にとっても、浅田さんがどんな状態にあっても努力し続ける姿はロールモデルとなっています」

 浅田が“第一線”で戦い続けた日々が日本をフィギュア大国へと押し上げたのだ。前出の小塚氏は、浅田の現役時代をこう振り返る。

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