便秘に悩む人は多いが、便秘で病院を受診する人は少ない。理由として市販の便秘薬が数多く販売されていることや便秘の専門外来が少ないことも挙げられる。便秘症はダイエットなどで食事制限をする若い女性に多いと思われがちだが、60歳を境に患者が急増し、女性よりも男性が多い。便秘症の患者の平均年齢は約78歳とされ、高齢になればなるほど便秘症が増える。
便秘症が増えている背景として日本人の食生活の変化がある。厚労省は1日の食物繊維摂取量を20グラムと推奨しているが、特に若い女性は1日約3グラムしか摂っていない。便の量も減少し、15年前の日本人は1日約200グラムの便量があったのだが、現在は約半分近くになり、イギリス人の1日100グラムに近づいている。
そのため高齢化社会を前に、初の便秘症のガイドラインが制定された。制定中心医師の横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室の中島淳主任教授に聞いた。
「便秘は診断が非常に難しい病気です。仮に便秘で悩み、病院を受診しても患者が毎日排便はあるというと、医師は毎日あるなら問題ないといって、患者の苦しみが理解されないことがままあります。今回のガイドラインでは、便秘を本来体外に排出すべき糞便が十分量かつ、快適に排出できていない状態だとシンプルに定義しました」
要するに、便秘は排便回数や排便量が少ないために糞便が大腸内に滞った状態、あるいは直腸内にある糞便を快適に出せない状態をいう。毎日排便があったとしても、なんとなくすっきり出ない状態も便秘症という病気だ。
便秘の原因は数多くある。例えば、近年患者が増えているパーキンソン病の初期症状は頑固な便秘である。他にもアルツハイマー型認知症になると便秘が始まる。糖尿病性神経症患者も便秘が多いし、疾病に伴う原因以外に、薬の副作用による便秘も多い。